今回は、フランスで市販の張りキャンバスや…キャンバス用の木枠
これにより、現在の木枠の規格や…タテヨコ比率の起源とか由来の
つまり今回は…フランスがメートル法化する前のおハナシです。
フランスではフランス革命後の1799年以降…段階的にメートル
旧単位体系から新たにメートル法に切り替わるということは、長さ
それに、革命後の『ナポレオン帝政』や『旧ブルボン朝による復古
と言うのも…どこの国でも “計量に関する法律” は統治体制と深い関係を持ちます。旧ブルボン朝が権力を取り戻し
その後…そのブルボン朝王家が七月革命によって再び倒され、オル
ただやはり、実際に市民の間にメートル法が根付くにはさらに時間
まぁそれでも…おそらく19世紀後半〜19世紀末までには、市民
何度も繰り返しますが、メートル法化する前のフランスは現在とは
この旧単位体系は十進法に囲まれて生活している日本人にとっては
そもそも、何で10じゃなくて12でひとまとめにするのか…が、
どうやらこれは、12をひとつの “まとまり” だとすると…それを2分の1にしたり、3分の1にしたり、4分の
2分の1であれば、6。
3分の1であれば、4。
3分の2であれば、8。
4分の1であれば、3。
4分の3であれば、9。
6分の1であれば、2。
6分の5であれば、10。
一方、10をひとつのまとまりとしている十進法だと…整数で表現
半分の半分 (4分の1) すら整数では表現出来ず、2.5とか7.5というように…小数点
でも日本での単位体系は十進法。尺貫法を使っていた時代から…基
日本国内で使われる “十二進法” って、鉛筆やゴルフボール、箱に入った瓶入りの飲料、箱に入った
瓶飲料などで24本入りの箱なら『2ダース入り』、6個入りのカ
ちなみに、ダースは漢字で書くと『打』です。
みなさんもご存知でしょうが、ダースの上の単位はグロスです。
(12ダースで1グロス)
あ、そう言えば時計の文字盤は12個の目盛がありますよね?
あれも十二進法の一種です。
しかも、目盛が12個有っても『3・6・9・12』の4ヶ所にし
そのタイプの文字盤を頭の中にイメージしていただくのが、“長さ
例えば直定規の目盛が12進法で付けられていたのなら、『0 (12) 』の部分と半分の『6』の部分に大きめな目盛があるのはもちろん
イメージ出来ますか?
時計の文字盤と一緒ですよ。
でも我々が使ってる10進法の直定規って…『0 (10) 』の部分と半分の『5』の部分だけが大きめな目盛ですよね?
これだと『0 (10) 』と『5』以外の小さい目盛を読み分けるのってけっこう大変じゃ
(残念ながら現在の英米で使われているヤード・ポンド法の直定規
ではここで、メートル法化される前の…昔のフランスでの長さの単 位をご紹介。
Pied = ピエ = 約324㎜
(これは 英米のフィートに相当する長さだそうです。ただし、フィートより
Pouce = プース = 約27㎜
(英米のインチに相当。ただし、インチより6.5%くらい長い)
Ligne = リーニュ = 約2.25㎜
(英米のラインに相当。ただし、ラインより6.5%
この、フランスの古い単位は12進法ですから
1ピエ = 12プース = 144リーニュとなります。
前回のメルマガでも少し述べた…1757年刊行の『美術辞典』な
※参考資料
この頃の木枠寸法にはP・Mは無く、現行サイズの『F型』に相当
PやMは…前にも申しましたが、メートル法導入後に肖像画以外の
何度か話題に挙げている『画材業界の通説』の通りの比率で作られ
さて、F型相当の一つの型しかない旧フランスサイズですが…添付
一番左の欄が『ピエ・プース・リーニュ』での表記。
おそらく当時の職人は、この様な書式の表を使っていたのでしょう
次の欄が、大きい単位であるピエと小さい単位であるリーニュを…
つまりピエの値には12を掛け、リーニュの値は…3リーニュを0
他のサイズと比較するためにも、12進法の呪縛を解き…10進法
その隣が、旧寸法の長さのままメートル法に換算したものです。
そして一番右は、現行のフランスサイズ。
メートル法施行後…おそらく市民の間にメートル法が定着した頃に
この『現行のフランスサイズ』の寸法を決める際、旧フランスサイ
あと一つ、旧フランスサイズの寸法表の中には見慣れないサイズが
現行サイズには採用されなかった『70号』です。
幻のサイズです
では旧フランスサイズの寸法表を一番左の欄から見ていきましょう
表の中の『○’』がピエを、『○”』がプースを、『○‴』がリー
ちなみに、前回の後半で話題に挙げたキャンバス布の幅ですが、当
あ、このままじゃ計算しづらいですのでプース表記でまとめてみま
4ピエは48プースに変換出来ますから…48+4プースで、52
1プースは約27㎜ですから
52 × 27 = 1404㎜
つまり約140㎝です。
亜麻布の主要産地の一つであるフランドルの高級な亜麻布は、6ピ
6ピエは72プースに変換出来ますから…72 + 6プースで、78プースとなります。
78 × 27 = 2106㎜
つまり約210㎝です。
では、改めて添付画像の旧フランスサイズの木枠寸法表をご覧にな
日本の木工職人は『尺』の単位だけで寸法を再現出来そうな場合は
また、『寸』の単位を使っても寸法が再現出来ない場合はその下の
あの時と同じような光景が旧フランスサイズの寸法表にもまざまざ
もちろんフランスの職人は “翻訳者” ではなく、“立案者” であり “創造者” 。
彼らが彼らなりの発想で、号数や寸法…比率などを世界で最初に作
そこに…どういう意図があってその寸法・比率になったのか、解き
旧フランスサイズ、60号・100号・120号の3行をご覧くだ
この3つのサイズは、プース・リーニュは使わず、ピエだけで完結
とても単純な整数比で寸法が設定されていますよね?
おそらく、この3つのサイズが、最も古くから採用されていた寸法
60号 = 4ピエ × 3ピエ
100号 = 5ピエ × 4ピエ
120号 = 6ピエ × 4ピエ
いやぁ、シンプルです!
定規の目盛も読み易い!
これなら当時のフランスの木工職人も作りやすかったでしょう。
比率は…
60号が短辺1に対して長辺は1.333。
これはちょいと細めなキャンバスですね。
100号は短辺1に対して長辺1.250。
120号は短辺1に対して長辺1.500。
これは白銀比の長方形よりも…もっと細め。
120号は、前回も申しましたが…『立位肖像画専用』という役目
100号は半身の肖像…あるいは椅子などに腰掛けた肖像に使いや
60号はその中間にあたる…ちょいと細めの比率なわけですが、お
と3ダースは考えています。
『通説』でのF型の比率は…短辺1に対して長辺1.236ってい
確かに、旧フランスサイズの100号はこの通説のF型比率に近い
でもこの旧フランス100号の比率の由来は、黄金比の長方形を真
黄金比だのその真っ二つだのっていう小難しいハナシじゃなく、大
4:3 (60号) であり、
5:4 (100号) であり、
6:4 (120号) だったわけです!
これらはまさに “原初的な比率” とも言えるでしょう。
それに…前回にも申しましたが100号・120号はどちらも短辺
この3つのサイズは…使い勝手のとても良い寸法だったはずです。
あと、以前にもご紹介した…フランスサイズ寸法表には存在しなか
F150の尺貫法時代の寸法は…なんと旧フランスサイズの100
F200・F300・F500の尺貫法時代の寸法は…旧フランス
っていうか、F300の比率は旧フランス60号と完全に一致して
思うに…大サイズを考案した昭和初期の日本の木工職人にとっても
『通説』がいつ頃から画材業界内で語られ始めたのか知りませんが
ちなみに旧フランスサイズの120号は…60号の短辺を2倍にし
面積が倍になってるから号数が120ってことなのかしらねぇ?
なんか、妙に納得できちゃいます
さあ、旧フランスサイズの表をもっと読み解いて行きましょう。
60号とまったく同じ比率のサイズが、実はもうひとつあるんです
4号です!
長辺が1ピエ、短辺は9プースです。
9プースは4分の3ピエのことですから、定規の目盛としては読み
ちなみに、4号は60号の…長辺も短辺も4分の1にした長さです
ちなみに、面積は16分の1。
次は25号にご注目ください。
まず短辺を見てみましょう。短辺は2ピエ!
完結していますねぇ。
長辺は2ピエ6プースですが、6プースはピエの半分ってことです
ですから、このサイズも、相当古くから採用されていたと考えてよ
これ…よく見てみますと、長辺と短辺…どちらも100号のちょう
『100の4分の1だから25なのか』…と、妙に納得。
100号と相似形なわけですから、当然タテヨコ比率も100号と
さらに寸法表をよく見ると、6号の長辺と短辺は…ともに25号の
長辺の1ピエ3プースも、もちろん読み易い目盛。
つまり6号・25号・100号はすべて相似形で、当然まったく同
面白い!
完全に同じ比率のものが複数存在する60号と100号…。これは
今度は60号以上のサイズに注目です。
60号と100号のそれぞれの長辺同士・短辺同士をご覧ください
60号の長辺は4ピエ、100号の長辺は5ピエです。
そして…60号の短辺は3ピエ、100号の短辺は4ピエですね。
それらのちょうど中間の長さはわかりますか?
そう、4ピエと5ピエの中間は4ピエ6プース。
そして3ピエと4ピエの中間は3ピエ6プース。
この辺の長さはまさに80号の木枠寸法なのです。
『60と100の中間だから80』ってのも、なんだか納得出来ま
さらに、現行の寸法表からは削除されたサイズですが…70号にも
こちらは60号と80号の各辺のちょうど真ん中の長さになってい
3プース (ピエの4分の1) も、12進法の定規であれば…もちろん読み易い目盛なわけです。
12進法だからこそ、ピエの半分の半分という長さを “ためらいなく” 使えるんですよ。
12進法、意外にも便利じゃないですか?
こうやって、規格サイズのラインナップを増やしていったんでしょ
面白いですねぇ。
旧フランスサイズの研究は、次回に続きます。
【第51回終わり】














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