第34回_ホントはタブーな…お値段のハナシ

はじめに

みなさん、お値段(納品価格とか送料)のこと、どう考えてらっしゃいますか?

タブーっぽいから、あんまり言いたくなかったんですけど、でもやっぱり「価格や送料の交渉の機会すら与えてもらえなかったこと」ってあるんですよね、何度も。

なので、やや感情的にはなるかもしれませんが、記しておこうかなと思います。

よろしければ、お付き合いください。


経済学の基本原則

まずは、経済学の基本的なお話から。

価格というのは需要と供給のバランスで決まりますが、実際の取引においては、「受益者負担の原則 (beneficiary-pays principle)」というものが、より実感として近いと思います。

「受益する者が、負担もする」というやつです。

たとえば、買い物において、ある商品を購入することで恩恵を受けるのは、もちろんその「買い手」です。

ですから商品の代金を支払うのは「買い手」であり、同時に「送料を負担すべきは買い手」ということになります。

実にシンプルな理屈ですが、もう少し詳しく説明してみます。


定価と値引きのメカニズム

どんな商品にも「定価」というものがありますが、メーカーの決めた定価で販売しなければならないわけではありません。

販売業者の販売努力で、もし価格を下げてでも、あるいは販売数を増やすことで定価を下げてでも「売れる」のであれば、そうするのも自由です。

とはいえ、販売数を増やして仕入れ値を下げたところで、下げられる価格には限度があります。

基本は、定価での販売です。


値引きの意味と限界

でも、値引きってあるじゃないか、と思いますよね?

ありますあります。

でもそれって、たとえば「送料無料」とか、そういった条件がついてきます。

つまり本来は「買い手が負担すべき送料」というコスト(費用)を、販売業者が「肩代わり」しているんですね。

または、販売業者の利益を削って、その分を買い手に還元しているということです。

本来なら、3ダースが得るべき利益や、本来なら買い手が負担すべき費用を、まるまる買い手に「プレゼント」しているようなものです。

そう、それはもはや「値引き」というよりは「おまけ」とか「サービス」であって、買い手にとってはありがたいことですが、それを「当然の権利」のように主張されたら、さすがにムッとします。


消費税の仕組みを理解する

もうひとつ、消費税についても触れておきましょう。

よく勘違いされることですが、「定価3,300円の商品を3,000円で納品したら、300円まるまる値引きしたことになる」と思われがちです。

でも、違うんです。

消費税(10%)を考慮すると、定価3,300円というのは「本体価格3,000円+消費税300円」です。

一方、3,000円で納品した場合、その内訳は「本体価格2,727円+消費税273円」です。

つまり、実際に3ダースが受け取る金額は2,727円であって、3,000円ではないんです。

したがって、定価3,300円の商品を3,000円で納品したとき、実際の値引き額は「273円」ということになります。


送料負担の考え方

ここで送料の話に戻りましょう。

たとえば送料が300円かかるとして、それを3ダースが負担した場合、実際の手取りは「2,727円-300円=2,427円」になります。

定価の本体価格3,000円に対して、573円も安く納品したことになるんですね。

これ、けっこう大きな「おまけ」だと思いませんか?


先代社長の教え

3ダースの先代社長(父)は、よくこう言っていました。

「商売ってのは、お互いさまなんだよ。条件を揃えて比べないと、フェアじゃない」

つまり、価格を比較するときには「同じ条件」で比べるべきだ、ということです。

送料を3ダースが負担する場合と、他社が負担しない場合とでは、そもそも条件が違います。

それなのに「価格だけ」を見て「高い・安い」を判断されたら、そりゃあ不公平です。


実際に起きたこと

ここからは、実際にあった出来事です。

① 他社に乗り換えた学校での出来事

ある年、〇〇高文連の美術展において、これまで3ダースと取引のあった学校が、他の業者に乗り換えました。

理由は「価格が安いから」とのこと。

でも、その「安い」という比較は、送料込みの価格だったのか、送料別だったのか、その時点では分かりませんでした。

そして美術展当日。

その学校の先生が、搬入作業中に3ダースのところへ来て、こう言いました。

「やっぱり3ダースさんのほうが良かったですよ。あっちは送料取られるし、対応も悪いし」

そのとき3ダースは思いました。

「え? だったら最初から、送料込みの総額で比較してくれれば良かったのに……」

でも、もう遅い。

取引は他社に移ってしまったし、その先生との関係も、なんだかギクシャクしてしまいました。


② 梱包を拒否された立体作品

別の年、別の学校でのこと。

その学校は、以前から3ダースと取引があったのですが、ある年から「他の業者のほうが安い」という理由で、そちらに乗り換えました。

そして美術展当日。

その学校の生徒が制作した立体作品(かなり大きめ)を搬入するとき、3ダースがいつものように「梱包しましょうか?」と声をかけたところ、その学校の先生にこう言われました。

「いえ、結構です。今年はそちらとは取引してませんので」

3ダースは「そうですか……」と引き下がりましたが、内心は複雑でした。

「別に、梱包するくらい、サービスでやってあげてもいいのに……」

でも、その先生の態度は明らかに「拒絶」でした。

仕方なく、その生徒さんたちは、むき出しのまま立体作品を運んでいました。

見ていて、ちょっと切なくなりました。


③ 価格交渉の機会すら与えられなかった

そして、最もショックだったのが、これです。

ある学校から、まったく連絡もなく、いきなり他の業者に乗り換えられたことがありました。

後日、その学校の先生に「なぜ連絡してくれなかったんですか?」と尋ねたところ、こう言われました。

「いや、他のところが安かったんで……」

3ダースは言いました。

「でも、価格交渉の機会くらい、いただけませんでしたか? もしかしたら、もっと安くできたかもしれないのに……」

すると、その先生はこう答えました。

「あ、そういうのはいいです。もう決めちゃったんで」

そのときの3ダースの気持ち、分かりますか?

「ああ、そうですか……」としか言えませんでした。


まとめ

長々と書いてしまいましたが、言いたいことはシンプルです。

「価格を比較するなら、条件を揃えて比較してほしい」

「送料は、本来、買い手が負担すべきもの」

「値引きや送料無料は、販売業者からの『おまけ』であって、当然の権利ではない」

そして、

「せめて、価格交渉の機会くらいは与えてほしい」

ということです。

もちろん、どの業者と取引するかは、学校の自由です。

でも、長年お付き合いしてきた業者に対して、一言の相談もなく、いきなり乗り換えられたら、やっぱり悲しいです。

そして、「送料込みの総額」で比較してもらえなかったことも、残念でした。

もし、この文章を読んでくださっている先生方がいらっしゃったら、どうか「総額」で比較してください。

そして、可能であれば「価格交渉の機会」を与えてください。

それが、フェアな商売というものだと、3ダースは思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【第34回終わり】

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