最近…ほぼ毎回のように感想メールをくださる若い先生から、また
『尺貫法の寸法表にS型の欄が無かったのは単に省略しただけなん
鋭い ‼
はい、省略ではありませんよ。
敢・え・て、書かなかったんです。
書かなかった意味が…ちゃんとあるんです。
そしてもう一つ、やはりこの先生もお気付きでしたが、フランスサ
これも省略ではないんです。
敢えて書いてないんです!
『いやいや3ダースサン、長辺と同じ数値をもう一回書くのが面倒だか
でも違うの!
敢えて書いてないの!
書く必要が無かったから、敢えて書かなかったの。
そもそも…前回の後半で述べましたが、日本人はフランスサイズに
実はS型 (正方形) の規格寸法も、ほぼその頃に初めて発売されたんです。
だからそれまで…S型なんていう “変な規格” は存在しなかったんです。
当然、戦前の尺貫法の時代には…それらの変な規格寸法は存在して
っていうか、書いてあったらいけないんです。
フランスサイズの寸法表にも…S型の欄が書かれていないのは、1
でもね、衝撃の事実
日本でF130とかS型の “既製品の木枠” の発売よりもはるか前から、そういう “変なサイズ” のキャンバスを使ってる画家は存在したんです。
F130も正方形も、画家が自力で簡単に作れちゃったんです。
それだけじゃありません。超細長いキャンバスだって簡単に作れち
これは画家本人が角材などを加工して “手作り木枠” を作っていた…っていう意味ではなく、市販の木枠の “パーツの組み換え” で…そういう変なサイズのキャンバスを作れちゃったんです。
『ああ、それならわかりますよ。自分もやったことあります。手元
そうなんですよ。
現代の木枠でも、短辺の位置に1つ下のF型の短辺を持って来ては
さらにその下のサイズの短辺を持って来てはめ込めば、Mよりもっ
でも、F100の “長辺” とF120の “長辺” を組み合わせてF130を作り出す…とか、同じ号数の木枠を2組
出来ないんですよ。
構造上不可能なんですよ、現代の木枠では…。
しかし、昔は作れたらしいんです。
簡単に作れちゃったらしいんですよ。
簡単に作れちゃった理由

※昔の木枠の模式図

※現在主流の木枠の模式図
添付画像をご覧ください。
1枚目が昔の木枠の模式図 (ただしこれは、あくまでも3ダースの想像図) です。
2枚目は現在主流の木枠の模式図です。
どこが違うか、わかりますか?
よ〜く見比べてみてください。
昔の木枠は、4つの辺を組んだ状態で裏面から見ると…ホゾの噛み
現代の木枠は『H型 (はしご型) 』に組まれています。
昔の木枠は、辺の両端にあるホゾが1枚対2枚だったのです。
いわばオスとメスの構造になっているので、長辺のパーツを短辺の
ですから、F100の長辺とF120の長辺を組み合わせてF13
これはフランスで木枠の基本構造が考えられた頃からそうだったみ
一方、現代の木枠では…辺の両端のホゾの作りは『オス・メス』で
ですから長辺の両端は『長辺用のホゾのカタチ』になっていて、短
つまり、“長辺のパーツ” を “短辺の位置” に持って来て長辺同士で組ませようとしても…ホゾがぶつかり合う
なぜ木枠製造業者は “組み換え可能な便利なシステム” を見限り、ホゾの構造を変えてしまったのでしょうか?
それはおそらく4辺を組んだ時の強度に対する心配からでしょう。
それに昔ながらの風車型に組む構造だと…斜めのチカラが加わって
4本の木枠を四角く組む時や、キャンバスを張ろうとプライヤーで
一方…現代の『H型 (はしご型) 』の組み方なら、斜め方向にチカラが逃げませんから菱形にひしゃ
だから長年続けていたフランス式のホゾの切り方をやめ、昭和50
ちなみに…3ダースが学生時代に先輩から教えられたのは『木枠を4辺
その頃はとっくに “現代の木枠” に切り替わっていたはずですが…おそらくひしゃげやすい昔ながら
ホゾの切り方が変わり…ひしゃげにくい構造になりましたが、今度
自由の利かない木枠を売り出す…ということは長辺同士を組み合わ
その、一部の画家達の要望に応えるカタチで…F130とかS型の
ちなみに皆さんご存知でしたか?
Fは『figure = フィギュール』で人物型。
Pは『paysage = ペイサージュ』で風景型。
Mは『marine = マリーヌ』で海景型…とされています。
この、聞き慣れない横文字はフランス語です。
まぁここまでは美術の先生方でしたら常識の範囲内ですよね?
油絵専攻でなくとも…。
ではSは?
『square = スクエアー』で正方形。
おや、ナゼかこいつだけ英語ですよね。
F・P・Mはフランス語で、Sだけ英語。これって不思議じゃない
3ダースは不思議に思いますよ。
メチャメチャ不思議でしたよ。
でもこれ、ほとんどの人はスルーしちゃってますよね?
スルーしちゃっていいんですか?
ここは、画材の歴史を研究する側から見たら重要なポイントなんで
ちなみに、F・P・M同様にフランス語で正方形を表せば『car
ご存知でしたか?
『森永カレ・ド・ショコラ』の “カレ” ですよ!
ですから、フランス由来のルールに従っていたのなら…正方形を表
つまり、正方形のキャンバスって…フランスから正規のルートで入
おそらく、アメリカの現代美術系のムーブメントの影響なんでしょ
(Sの記号に関してはまた後日に触れる機会があるかもしれません
ハナシはF・P・Mに移ります。
フランスにおいて、メートル法が導入される前の時代にはFもPも
単なる数字による号数表示だけです。
まあそれは結局…今で言うところのF型のことなんですけど
つまりキャンバス用木枠の規格サイズは…最初はF型だけだったん
実際、用途は人物画でした。
肖像画ですね…圧倒的に。
王侯貴族ばかりでなく、高級聖職者、将官、そして新興市民階級も
ですので、既製品のキャンバスは人物画を描くのにちょうど良い比
やがてフランスにおいてメートル法が導入され、木枠寸法もメート
PとMです。
(ちなみに最初、ペイサージュとマリーヌが出現したばかりの頃…
“portrait = ポルトレ = 肖像” だったようです。ポルトレのPはペイサージュのPとカブるため、
1891年にフランスで刊行された書籍に載っている『張りキャン
しかしその都度その都度の受注生産は…とても面倒なわけです。そ
そんなわけで、やがて一つ下のF型の短辺をはめてP…。二つ下の
実際1894年頃のフランスサイズの寸法表を見ると、PとMのす
もっと言うと…肝心のF型の短辺だって、16サイズあるうちの7
(前回添付した1894年頃のフランスサイズの表をご参照くださ
なるべく労力をかけず、規格に従って大量に作られたパーツをFP
現在画材業界で真実味をもって語られている『通説』とは・・・
現在画材業界で真実味をもって語られている『通説』… (Mは黄金比、Pは白銀比、Fは横長に置いたMを真っ二つにした
やれ黄金比だの白銀比だの…崇高な理想のもとに設計されたかのよ
実際は…そんな高尚なハナシじゃなく、昔の木工職人が勝手にタテ
3ダースも前々回で言ってましたよね?
『昔のヒトが適当にタテヨコの寸法を決めちゃったから…』って。
まさにそういうことなんですよ。
理想の比率に固執し、小難しい計算式をもとに…定規の細かい目盛
職人は数学者じゃないんだし、芸術家でもない。
効率良く木枠を作り出すのが仕事ですから。
作業効率を優先させるなら、わかりやすくて単純な目盛 (単位) を用いてシンプルに設計された『 “規格”というシステム』を頼るのが最善なのです。
実際…職人は黄金比だの白銀比だのなんかは意識していなかったは
その証拠に黄金比ピッタリに作られたMなんかはフランスサイズの
(日本サイズのMには、ほぼ黄金比のサイズが2つありました)
白銀比にほぼピッタリで作られたPも…14サイズ中P30とP1
それどころか、フランスサイズのM15なんかは…P100よりも
最後に、フランスサイズの比率の計算をしていて…ひとつスゴイの
皆さんも計算機をお手元に…。
長辺の1000㎜を短辺の810㎜で割ってみてください。
短辺1に対して…長辺がどれだけの比率なのかが分かりますよ。
【第49回終わり】












コメントを残す