第5回_ケント紙と画用紙の大きさのハナシ①

美術の授業でよく使われる「4切」

ケント紙や画用紙ですが…学校の美術の授業でよく使われるのは、圧倒的に『4切(よんさい)』ですね。

※ 表記について
正しくは『4裁』と書くべきなのでしょうが、ウチと紙問屋さんとの共通認識で『4切』と書き『よんさい』と読んでいます。たぶん画材業界全体がこの認識だと思います。

  • ケント紙でしたら**”四六判の4切”**
  • 画用紙でしたら**”B本判の4切”**

4切…すなわち、半分の半分。
4分の1ってことです。


よくある問い合わせ(クレーム?)

時々、『同時に納品してもらったケント紙と画用紙…同じ4切のはずなのに大きさが微妙に違うんだけど?』というお問い合わせ(クレーム?)をいただくことがあります。

トホホ。

Yahoo!知恵袋の間違った回答

Yahoo!知恵袋にも変なのがありましたわ。

『四つ切ケント紙と四つ切画用紙の違いを教えて』という質問に『四つ切と書いてある以上、サイズは同じです!』なんて回答が…

この回答者、バカか?
バカでしょ?

知識や経験の無い人がでしゃばって回答しちゃダメでしょ!
しかも、ベストアンサーって!


なぜサイズが違うのか?

え~、もうみなさんご存知の通り…ケント紙と画用紙はそれぞれの元の判(原紙寸法)の大きさが違うから、4切にした時の大きさも違って来るんです。

当然、ポスターフレームの『画用紙四つ切用』にケント紙の4切は入りません!
周りをけっこうな幅で切らないと、入れられません!

さらに厄介な問題

また、たとえ画用紙の4切であっても、ポスターフレームの『画用紙四つ切用』に入れるとギリギリキツい場合もあるんです。

なぜでしょうか?


統一規格が存在しない

実は、『画用紙四つ切』っていう寸法が**”統一規格”で決まってるワケじゃない**から…なんです。

『画用紙四つ切』などという全国統一規格なんて、無いんです!

実際の寸法例

あるポスターフレームメーカー:
380 × 540㎜』で画用紙四つ切用のポスターフレームを作ってるようです。これはおそらく”裏板寸法”と呼ばれる寸法でしょうから、中に入れる紙はプラス1㎜までなら問題なく入るハズ。

美術用紙メーカー大手の”M社”:
4切画用紙は『382 × 542㎜』のようですので、これはひょっとしたらほんの少し切らないと入らないかもしれませんねぇ。

ウチで主に扱っている”O社”の画用紙『シリウス』:
4切は、だいたい『381 × 541㎜』です。


単純計算より小さい理由

『ちょっとちょっと3ダースさん、ただ4分の1に切るだけなのに…なんで微妙に小さくなってるの?』って、気づいちゃいました?

そう。
B本判(765 × 1085㎜)を単純に半分の半分に切っただけなら…
**382.5 × 542.5㎜**になるはず。

なぜ少し小さくなってるのか?

「化粧断ち」という仕上げ

実は…この微妙な差は、紙問屋(紙メーカー)さんが**”化粧断ち”**という仕上げの断裁をしてくれているために生じるのです。

印刷工場や紙問屋にある断裁機は0.01㎜の精度で断裁位置を調整できます。
また、けっこうな枚数をいっぺんに断裁できちゃいます。

十文字に断裁した紙の断面は…完全なまっ平らになってるんですが、切らなかった外周の側面はイマイチまっ平らじゃない…。

となると…切らなくて良いハズの外周の側面も、断裁機のオペレーターさんがキレイに切り揃えてくれたりするんです。

オペレーターの美意識

それを0.5㎜幅で切るか、0.2㎜幅で切るか、0.05㎜で切るのか…それとも1㎜で切るのか。

不揃いに見える外周側面の具合で、”削る”厚みは見極められます。
ま、**オペレーターさんの美意識しだい…**ってところですね。

したがって…『画用紙の4切』って、厳密に測ればひと包みごとに大きさが違ってる…かもしれないんです。


そういうものです

そういうもんです。
そういうもんなんです。

JISの仕上がり寸法みたいに厳密に決められてるワケじゃないんだし、**”素材”**である原紙を4分の1にする程度のことですから…微妙な誤差は有り得るんです。

ぶっちゃけ、画用紙だのケント紙だのの1㎜程度のズレに目くじら立てちゃいけないと思います。

あくまでも**”素材”**なんだし…。仕上がり寸法の規格に従って仕上げてるワケじゃないんだから…。

そのへんはご理解、よろしくお願い申し上げます。


「四つ切」という言葉を避ける理由

さて、もうお気づきでしょうが、3ダースは画用紙やケント紙に対して『四つ切(よつぎり)』というコトバを使うのを極度に避けております。

今回は、知恵袋の記事やポスターフレームのサイズの名称に”そういう表記”があるから仕方なく書いてきましたが、『四つ切』っていうコトバは普段は絶対使いません

理由:業界によって違う

なぜなら、『四つ切』という言い方は業界によって全然違う大きさを表すコトバなので、誤発注の原因になるからです。

写真業界:
『印画紙の四つ切』サイズ…。
およびその印画紙に対応するマット付き額縁の大きさにも『四つ切』という名前が使われます。

額縁業界:
水彩額のサイズの名称に『四ツ切』(347 × 423)というのがあります。
これは、”印画紙の四つ切”とも”画用紙の4切”とも…まったく関係の無い大きさなのです。


呼び分けのルール

ですので…水彩額のサイズを呼ぶ場合は『四ツ(よつ)』と、紙の断裁の場合は『4切(よんさい)』と呼び分けるよう…私は決めています。

(ウチは写真業界とは直接の関わり合いはありませんから、この2通りの呼び分けだけで大丈夫)

おそらく、他の画材屋でもそうしていると思いますよ。
逆に、呼び分けをしていない画材業者は…ちょっと信用できないと思います。

先生方へ

もちろん、先生方は”よんさい”でなく…『ケント紙の**”よつぎり”』とか『画用紙の”よつぎり”**』って言っていただいても、全然大丈夫です。

先生とウチとの間では、誤発注の恐れはありませんから。


【第5回終わり】

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