はじめに
今年自分が関わったイベント「カベヌマ」についてブログを書きます。
沼津駅北口、旧イシバシプラザ跡地。40年以上にわたり地元に愛されてきた商業施設が2021年8月に閉館し、姿を消してから4年。更地を囲む数百メートルに及ぶ真っ白な防音壁が、寂しさを際立たせていました。
「街灯がなくて暗いんです」——そんな周辺住民の声から始まったのが、ミューラルアートプロジェクト「カベヌマ」です。2025年6月28日に制作が始まり、9月6日に完成披露を迎えたこのプロジェクトは、「このまっさらなキャンバスを生かし、まちを明るく照らしたい」という想いから生まれました。
今回は、自分が担当している沼津市の画材店「ハイクリエイト」さんの紹介で知り合った、カベヌマ代表・青木一さんとの出会い、そしてこのプロジェクトへの商品協力を通じて感じた「地域ファースト」の大切さについてお伝えします。
カベヌマプロジェクト概要
プロジェクト名:カベヌマ(沼津ミューラルアート)プロジェクト
場所:静岡県沼津市高島町 沼津駅北口 旧イシバシプラザ跡地
制作期間:2025年6月28日〜9月6日
完成披露:2025年9月6日(土)
参加アーティスト:8組(10作品)
コンセプト:「青空の下の美術館」
実行委員会メンバー
- 代表:青木一さん(あおき屋株式会社)
- 副代表:加藤明子さん(沼津市議会議員)
- 広報担当:高橋和之さん(静岡新聞社)
このプロジェクトは、沼津市議会議員の加藤明子さんが「アートの力でまちを歩いて楽しくなる仕掛けづくりをしたい」と青木一さんに相談したことから動き出しました。実行委員会メンバーは、1年以上前から準備を重ね、アーティストとの調整、活動を支援してくれる企業や団体への呼びかけを行ってきました。
参加アーティストと作品
沼津に縁のある8組のアーティストが、それぞれの個性豊かな作品を制作しました。
- 渡邊純さん:「沼津大好き」(ポリゴン風のイラスト、沼津らしいモチーフが満載)
- マツナガマサエさん:「祝福」(マスキングテープアート)、サイトのアイキャッチ画像
- 斎藤遥加さん:「はずむように、越えてゆく」(沼津の市の花ハマユウをモチーフ)
- 鈴木翔太さん
- 草井裕子さん:「自由」(抽象画・点描画)
- ペトロアンドヨゼフ(深澤慎也さん、田川誠さん)
- mokoさん:「#焼き菓子沼」(焼き菓子をちりばめた作品)
- YUSUKE SUGISAWAさん
市民参加型ワークショップ
2025年7月20日(日)・21日(祝・月)には、市民が作品づくりに参加できるアートワークショップが開催されました。
- 草井裕子さんの点描画:抽象画「自由」に市民が点を描き加える
- 渡邊純さんの「沼津大好き」:ポリゴン風の線画にペンキで色塗り
- マツナガマサエさんの「祝福」:マスキングテープやシールで色を付ける
未就園児から大人まで、幅広い年齢の参加者が、プロのアーティストの作品に触れる貴重な機会となりました。
ハイクリエイトとの出会い
私が沼津市で担当している「ハイクリエイト」さんは、沼津仲見世商店街にある画材・額縁の専門店です。2021年9月に旧イシバシプラザから移転し、静岡県東部、伊豆地区最大級の画材店として、地域のアーティストや美術愛好家を支えています。
この「ハイクリエイト」さんの紹介で、カベヌマ実行委員会代表の青木一さんと知り合うことができました。青木さんとお話しする中で、このプロジェクトの根底にある想いが、私たちが運営している「Five Star」と深く共鳴することに気づきました。
Five Starとカベヌマ〜同じ「地域ファースト」の趣旨〜
Five Starは「豊島区ファースト」をコンセプトに、地域のアーティストや文化を盛り上げることを目指しています。一方、カベヌマは「沼津をアートのまちにしたい」という想いから生まれたプロジェクト。
両者に共通するのは、**「地域ファースト」**という姿勢です。
- 地域に根ざしたアーティストの活動を支援する
- まちを明るく、歩いて楽しい場所にする
- アートを通じて人と人を繋ぐ
- 地域への愛着と誇りを育む
この共通する趣旨に深く賛同し、Five Starとしてカベヌマプロジェクトに商品協力させていただくことになりました。
IAG作家・草井裕子さんの参加
カベヌマプロジェクトの参加アーティストの中には、IAG AWARD 2018入賞者で東京工芸大学同窓会長賞を受賞した抽象画家・草井裕子さんがいました。草井さんは20年近く画家として活動し、パリ、ニューヨーク、東京、上海などで作品を発表している実力派アーティストです。
草井さんがカベヌマで制作した作品のタイトルは「自由」。真っ白な壁を真っ黒に塗りつぶすところからスタートし、点描画の手法で制作を進めました。
「20年近く画家をしています。仕事でもなんでも、ずっと同じことに取組んでいても、型にはまらずもっと自由であっていいと思うんです」
草井さんの言葉が示すように、この作品には、固定観念にとらわれず自由であることの大切さが込められています。制作中には、プロジェクトを知った市民が自発的に点描を描くお手伝いをする姿も見られました。大きさや間隔、形など、点描も人によって個性が出ますが、この個性が集まることで美しくなる——まさに「自由」を体現した作品です。
沼津とラブライブ!サンシャイン!!
今、沼津といえば「ラブライブ!サンシャイン!!」発祥の地として、アニメファンの聖地巡礼で賑わっています。沼津駅周辺には多数のロケ地があり、地域が活性化しています。
カベヌマプロジェクトでも、完成披露会には「#FindOur沼津」としてラブライブ!サンシャイン!!関連の参加がありました。アニメの聖地としての側面と、地元アーティストによるアートプロジェクトが共存する——これも沼津の魅力の一つです。
「おらが町」の大切さ〜カベヌマから学んだこと〜
カベヌマプロジェクトに関わる中で、最も強く感じたのは「おらが町」の大切さです。
青空の下の美術館というコンセプト、地元のアーティストが力を結集する姿、市民が自発的に参加する様子、そして何より「まちを明るく照らしたい」という純粋な想い——これらすべてが、地域への深い愛情から生まれています。
副代表の加藤明子さんは、こう語っています。
「沼津には実力のあるアーティストさんがいることを知ってもらいたかったし、じつはアーティストさん同士の接点がないことを聞いて。実際に一緒に作業をしていくうちに、ペンキを初めて使うアーティストさんが経験者にアドバイスをもらうなど、点が線になるように繋がりが生まれていると感じています」
アートを通じて、地域のアーティスト同士が繋がり、市民と交流し、まちが明るくなっていく——この循環こそが、地域を盛り上げる本質だと思います。
制作過程の苦労と喜び
カベヌマプロジェクトは、決して順風満帆ではありませんでした。
- 道路使用許可の関係で、制作時間は朝5時から夜8時まで
- 真夏の外作業で、白い壁がレフ板のように作用し、暑さとの闘い
- ペンキという慣れない画材に挑戦するアーティストも
- 安全配慮のため、実行委員会メンバーが制作中常に立ち会い
それでも、アーティストたちは早朝や夕方以降を中心に制作を進めました。制作中には「描いてくれてありがとう!」と年配の方が声をかけてくれたり、差し入れをいただいたりと、アートを通じて地域との温かい交流が生まれました。
イラストレーターのmokoさんは、初めてのペンキ、初めての壁画制作に挑戦し、こう語っています。
「ペンキを使うこと、外で作業するすること、初めてのことばかりで常に悩みながら進めています。カベヌマを通じて、自分が見られながら描くことに緊張するタイプなのがわかりました。さっきも、下校中の高校生から『カヌレ、えっぐ!(えぐい)』と、声が聞こえてきて(笑)担当するスペースが埋まったら終わりだと思ったけど、楽しくなってきてしまったので終わりたくないですね」
一度描き上げた焼き菓子を白く塗りつぶして違う焼き菓子を描き直すほど、作品への愛情を注いだmokoさん。マドレーヌを描いている時に食べたくなり、みんなで近くの安本さんに買いに行ったというエピソードも、プロジェクトの楽しさを物語っています。
今後の展望〜一緒に仕事ができれば〜
カベヌマプロジェクトで制作された作品は、新しい施設ができるまでは現在の場所で楽しむことができます。完成後には、テーマやアーティスト名などを紹介する「カベヌマインフォメーション」が設置されました。
参加アーティストの斎藤遥加さんは、こう語っています。
「カベヌマの活動が沼津に留まらず、いろんな場所に広がるといいです」
この言葉に、私も心から共感します。工事壁があるところなら、どこでもアートの力でまちなかを照らすことができる——カベヌマの取り組みは、全国の地域活性化のモデルケースになり得ると思います。
Five Starとカベヌマ、豊島区と沼津市、それぞれの「地域ファースト」の想いを持ったプロジェクトが、今後も色々な意味で一緒に仕事ができれば、と心から願っています。アートを通じて地域を盛り上げたいという想いは、距離を超えて繋がることができるのです。
まとめ
沼津「カベヌマ」プロジェクトは、地域への愛情とアートの力が融合した素晴らしい取り組みです。
- 真っ白な防音壁を「青空の下の美術館」に変えた発想
- 8組のアーティストによる個性豊かな10作品
- 市民参加型ワークショップによる一体感
- 地域のアーティスト同士を繋ぐプラットフォーム
- まちを明るく照らしたいという純粋な想い
ハイクリエイトさんのご紹介で青木代表と出会い、このプロジェクトに商品協力できたことは、私にとって大きな財産です。「おらが町」を大切にする気持ち、アートを盛り上げたいという共通の想いが、とても共感でき参考になりました。
イシバシプラザがあった場所に、数年後、新たなまちのシンボルが生まれる時、カベヌマの想いは必ず受け継がれていくことでしょう。そして、この取り組みが沼津に留まらず、様々な地域に広がっていくことを期待しています。
カベヌマ(沼津ミューラルアート)プロジェクト
公式サイト:https://kabenuma.numazu.world/
Instagram:@kabenuma
ハイクリエイト
所在地:静岡県沼津市大手町5丁目7-5(沼津仲見世商店街)
公式サイト:https://www.hicreate.info/














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