第35回_経済学的な用語の解説…のハナシ

はじめに

あくまでも3ダース独自の解釈による説明ですが、精一杯考えて書きましたのでお読みください。

まず、ウィキペディアから引用した文章があまりに難解(…と言うか意味不明)でしたので、改めて…その『受益者負担の原則』の説明文の解説をいたします。


ウィキペディアの引用文

まず、再びウィキペディアの引用文から。

【受益者負担の原則とは、原則として市場経済において、市場の失敗が生じない限り、利益を受けるもの(受益者)が市場で決まる価格を支払い(負担し)、その経費及び生産者への利益へ回す仕組みが最適となることを述べたものである。

基本的に受益者は、財・サービスの購入によって、その支払い額以上の便益(利益)を得る。】

やっぱり何言ってるのかわかりませんね。


『市場(しじょう)』とは?

ではまず、『市場(しじょう)』の説明から行きましょう。

市場とは “需要” と “供給” の相会(あいかい = 互いに出会う)する場のことです。

すなわち…『売り手』『買い手』『商品』、そしてその取り引きが可能となるための『貨幣』が存在する場…ってことですね。

別に “いちば” や “マーケット” というような建物や施設が有る必要はありません。あくまでも概念としての『場』ってことです。

ここまで、ついて来れてますか?

この “市場” において、『価格の形成』と『商品の移動』が行われる…とされています。

これも概念上の考え方ですよ。

経済学的に言うと『”多くの売り手” と “多くの買い手” が市場を形成し、自由競争によって価格が決まる』…とされています。

この市場において需要と供給の均衡により、価格と取引量が決まるんですが、これはみなさんもイメージしやすいでしょう。

中学校の公民でたぶん習ってますよね? グラフを使って…。

『需要曲線』と『供給曲線』の交わる所が『均衡点』。

そこから “均衡価格” と “均衡取り引き量” が導き出される…ってグラフ。

見たことありますでしょ?

(添付画像はWikipediaから引用)

まあ、ここまでは経済学的な考え方で説明した『市場』です。

小難しく考えなければ… “売り手と買い手が交渉する場” であれば、それは『市場』と言っちゃってだいたいオッケーだと思います。


『市場の失敗』とは?

次に『市場の失敗』とは?

ウィキペディアの “受益者負担の原則” の説明文を読むとき、この部分は読み飛ばしちゃって大丈夫です。今回のメルマガの話題にはまったくカスってもいない部分なので。

でも一応『市場の失敗』の説明もしておきます。

市場では、需要と供給の均衡を目指して自由競争が行われるのですが、必ずしも資源配分が最適になるとは限りません。

あ、”最適な資源配分” …っていうのは、生産物に売れ残りも品不足も無く、社会全体として無駄なく資本や資源が配分されている状態のこと。

この、最適な資源配分が行われれば経済的に理想のカタチなのですが、企業の独占や寡占、失業や公害、貧富格差など、様々な要因によってそのバランスがくずれちゃうことを、市場の失敗と呼びます。

ですから、今回の話題にはまったく関係ありませんから…この用語の部分は読み飛ばしましょう。


『便益』とは?

さて次の難解ワードはウィキペディアの文末に出てくる『便益』!

これ、みなさんにとって…もっとも馴染みの無いコトバですよね?

正直、これはわかりづらいです。

ネット上で調べてもロクな答えは出てきません。

『便宜上の利益』とか『便宜と利益』とか『便利で利益があるようにすること』とか『便利で都合がよく利益があること』…など。これ、全部違いますよ!

説明になってません!

経済学で言う『便益』とは、3ダースの解釈では『金銭的表現で表せる満足度』ってところでしょうか?

『満足度の価値化』でもいいかな?

『支払い意志額』っていう言い方でもいいかも。

下のたとえ話を読んでもらうと “支払い意志額” とか “満足度の価値化” ってことがわかってもらえるかと思います。


具体的なたとえ話:ラーメン屋の事例

では、具体的なたとえ話で『便益』と『市場メカニズム』に関して説明してみましょう。

登場人物の設定

ラーメン好きのAさん、Bさん、Cさんの3人がいます。彼らがラーメン1杯から得る便益(満足度を金銭的に数値化したもの)はAさんが1,500円、Bさんが1,100円、Cさんが900円です。

同じラーメンを食べたとしても、このような個人差があるのは、ラーメンに対する思いの深さや、金銭的な事情も絡んでくるからです。

Aさんはラーメンマニア。各地の名店にも足を運ぶような人。味の違いに敏感。良いモノは高くて当たり前っていう考え方なので美味しいラーメンには1,500円くらいの満足感を感じるのです。

BさんはAさんほど舌も肥えてなく、店による味の違いもイマイチわかりません。でも美味しいラーメンには1,100円くらいの価値を感じています。

Cさんは、ラーメンが好きなのは確かなんですが、出来ればそんなにお金をかけずに楽しめればいいなぁと思ってる人。お店で贅沢なラーメンを食べれなくても、家で作る市販のラーメンでも充分満足できるタイプ。

そして、このラーメンはDさんのお店で提供されるのですが、1杯生産するのにかかる費用は1,000円です。

誰がラーメンを食べるのが「望ましい」か?

さて、A、B、Cさんの3人のうち、Dさんのお店のラーメンを食べるのが “望ましい” のは誰でしょうか?

正解は『AさんとBさん』です。

当然ですよね。

なぜなら、AさんとBさんの場合、ラーメンから得る便益がラーメンを生産するための費用を上回っているからです。

つまり、経済的にプラスなんです。

この二人なら、喜んで代金を支払ってくれるはずです。

これに対してCさんの場合、便益が費用を下回っています。Dさんが1,000円の費用をかけて作ったラーメンをCさんが食べたとしても、Cさんは900円程度の喜びしか感じられないんですよ。

こういうお客さんから、はたしてDさんはいくらの代金をもらえばいいの?

すごくモヤモヤしますよね?

したがってCさんがこの店でラーメンを食べるのは “望ましくない” ということになるのです。


『市場メカニズム』による理想の結果

ではこの…AさんとBさんはラーメンを食べ、Cさんは食べないという、『理想の結果』を得るためにはどうしたらいいでしょうか?

どう仕向けたら理想の結果に至るのでしょうか?

もちろん本人たちの食べたい(あるいは食べたくない)…という意思を無視して、誰が食べれて誰が食べれないかを…別な誰かが勝手に指示し、強引にグループ分けすることはできません。

あくまでも、無理なく、本人たちの意思で動いてもらって、理想の結果に到達できるでしょうか?

それには、どうすれば良いでしょうか?

それは、ラーメン屋の店主であるDさんがラーメン1杯の値段を1,000円に設定し、食べたい人だけ食べに来てもらう…とすれば良いのです。

こうすると、便益が1,000円を上回るAさんとBさんだけがラーメンを食べることになります。

Cさんはラーメン1杯に1,000円も支払いたくないタイプなので、Dさんのお店には来ません。たぶん自宅で市販のラーメンを作って食べるのでしょう。

AさんとBさんは充分な満足感を得て1,000円の代金を支払い、Dさんはその代金でラーメンの再生産を行えます。

**これが『市場メカニズム』というものです。**ラーメンだけじゃなく、いろんな物の生産と消費に用いられているシステムです。

この市場メカニズムがうまく機能すれば、経済学的に見て『望ましい消費』は行われ、『望ましくない消費』は行われないことになるのです。


価格設定の自由と競争

では、ラーメン屋店主のDさんが1,000円じゃなく、例えば1,300円でラーメンを売り出しちゃったらどうなるんでしょう?

1,300円になったらBさんも…Dさんの店でラーメンを食べられなくなっちゃいますね?

そう。消費者であるA、B、Cさんには…自分が何を買い、何を買わないか…を決める自由があるように、生産者(販売者)であるDさんには…自分が何を作り、それをいくらの値段で売るか…を決める自由があります。

1,000円の代金を得ても、その1,000円は次のラーメンを1杯作る費用として使われるため、大きな余剰金が生まれません。

Dさんは1杯あたり300円…余計に代金をもらおうと目論んだんのですねぇ。えらく欲張っちゃいましたね 😅

これは吉と出るのか凶と出るのか…?

1杯あたりの利益は大きく増えましたが、お客が減ってますよね?

もっとバランスの良い着地点はあるのかしら?

自由競争による価格調整

そんな価格決定の自由があったDさんでも、ある条件が加わると…やはりラーメン1杯は1,000円という値段に落ち着くことになるのでしょう。

その “条件” とは、『他のラーメン屋との競争』です。 そう、『自由競争』ってヤツです。

Dさん以外にも、例えばEさんがラーメンを作っているとします。(味のレベルやクオリティはまったく同じってことで考えてください)

そしてDさんが1,300円でラーメンを売るのに対して、Eさんはほんの少し安い1,200円で売るとします。するとAさんはDさんの店ではなくEさんの店でラーメンを食べようとしますよね?

同じレベル・クオリティのラーメンなら少しでも値段が安い方がいいですからね。

しかしこれではDさんは唯一のお客のAさんさえも失うことになるので困ります。そこでDさんは値段を1,300円から再び1,000円に下げます。

思い切った値下げですねぇ。

でもこれでAさんだけでなく…一度は離れてしまったBさんも、再び来店してくれそうです。

すると… そうです、今度はEさんの店も値段を1,200円から1,000円に下げてくるでしょう。こうしてラーメンの値段は1,000円となるのです。

なぜ1,000円で下げ止まるのか?

じゃあどうして1,000円で下げ止まるのか…というと、それはラーメンの生産にかかる費用が1,000円だからです。

ここでいう費用とは、『最低でもこれだけ払ってくれないとラーメンは作らないよ』という金額と思っていただいて良いでしょう。

再生産に必要な『原材料費やガス代、電気代や水道代、店舗の家賃、人件費、丼や箸…鍋や調理機材の整備・メンテナンス費用等、さまざまな経費を合計した金額の…1杯分』とも考えられます。


『純便益』という考え方

さて、これまで見てきたように、市場メカニズムがうまく機能すれば、経済学的に見て『望ましい消費』が行われることになり、『望ましくない消費』は行われないことになります。

では、もう一度『便益』について考えてみましょう。

『ラーメンから得る便益が○○円』というのは、食べる側から言うと『ラーメンを食べるためなら○○円までなら支払ってもいいと考えている』…という意味です。

この便益から、実際に支払う代金(費用)を引いた金額を『純便益』と言います。

純便益がプラスの値なら経済的に『望ましい消費』とされます。

消費者(購入者)の喜び(受益)がプラスになるわけですから。

Cさんがこの店でラーメンを食べるのは、純便益がマイナスなので『望ましくない消費』となります。

値引きをして売るのが当たり前の美術教材は、便益が少ない商品とも言えそうですね。本来は値引きなんかしなくても、みなさんが大きな便益を感じてくれるような取り引きが出来たなら、うれしいんですが…。


わかりやすく書き換えた『受益者負担の原則』

はい、では便益をご理解出来たところでウィキペディアの受益者負担の原則をもう一度読んでみましょう。

3ダースが独自のコトバで書き換え、市場の失敗の箇所は削っておきました。

ウィキペディアの原文よりもわかりやすいんじゃないですか?

ではどうぞ。

【『受益者負担の原則』とは、市場経済において…市場メカニズムで決まった代金を購入者が支払うのだが、その代金に含まれている『経費』及び『生産者への利益』のすべてを受益者たる購入者が負担する仕組みこそが、経済のやり方として最も正しい…ということを述べたものである。

基本的に購入者は、財・サービスの購入によって、支払った金額以上の満足(便益)を受益する。】

いかがでしょうか?

元の解説文よりわかりやすい文に書き替えられたんじゃないですか?

この文では、取り寄せ送料などの経費は、最初から代金に組み込まれております。

また…生産者への利益とは、メルマガ本編で『仕入れ代金』と書いていたものです。

つまり、取り引きにかかったお金は、すべて購入者が受け持つのが正しい…ということなのです。

【第35回終わり】

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