JR西川口駅から歩いて5分。住宅街の中に、小さなアートのお店があります。
その名は「幸琳堂」。
1983年から続く、川口市でたった一軒の画材専門店です。40年以上も、この街のアート文化を支えてきました。萩原社長が守り続けるこの場所は、ただの画材屋さんではありません。川口という街のアート文化が、今も生き生きと息づいている場所なんです。
街角のギャラリー ――子どもたちの絵が飾られる窓
幸琳堂を訪れると、まず目に入るのがショーウインドウ。ちょうど子供たちの作品を陳列していました。
これ、実は2階にある「幸琳堂美術教室」の生徒さんたちの作品なんです。3〜4ヶ月ごとに入れ替わって、道を歩く人たちに「アートっていいな」って思わせてくれる。
教室の先生は、山村典子さん。東京藝術大学で保存修復を専攻された方で、20年以上も川口の子どもたちにアートを教えています。先生のInstagram(@aruithinichi)をのぞくと、教室の様子や子どもたちの成長が見られますよ。一枚一枚の絵に込められた想いと、それを見守る先生の温かさが伝わってきます。
なぜ川口に美術館ができるの?――中核市としての新しい一歩
そして今、川口という街に大きな変化が訪れようとしています。
2026年9月、JR川口駅西口から歩いてたった2分のところに、**「川口市立美術館」**がオープンします。
「え、なんで川口に美術館?」って思いますよね。
その理由は、2018年に遡ります。この年、川口市は「中核市」になりました。中核市っていうのは、人口20万人以上の都市に認められる、より大きな権限を持つ都市のこと。埼玉県では4番目の中核市になったんです。
川口市って、実は人口60万人を超える大きな街。でも、市立の美術館はありませんでした。中核市になるということは、ただの住宅都市から、地域の中心的な都市へとステップアップするということ。そうなると、やっぱり「文化の拠点」が必要になってきますよね。
川口は古くから「鋳物の街」として栄えてきました。職人さんたちの高度な技術が受け継がれ、そこから生まれる美術工芸品もたくさんあります。こういう地域の文化を、ちゃんと保存して、次の世代に伝えていく場所――それが美術館なんです。
「継承・共生・育成」
これが、川口市立美術館のテーマです。
- 継承 ― 川口の鋳物文化や美術工芸の歴史を、ちゃんと残していく
- 共生 ― みんながアートを楽しめる場所にする
- 育成 ― これからのアーティストや、文化を担う人たちを育てる
館内には「川口の部屋」っていう特別なスペースができる予定。川口の伝統工芸や、この街にゆかりのあるアーティストを紹介するんだそうです。市民が集まって、アートを通じてつながる――そんな場所になろうとしています。
アートで街が元気になる ――池袋の「Five Star」という取り組み
実は、こういう「地域に根ざしたアート」の活動って、川口だけじゃないんです。
東京・豊島区の池袋では、「Five Star 池袋アートマルシェ」っていうプロジェクトが動いています。私自身、このプロジェクトの実行委員長として、池袋という街でアートと地域をつなぐ活動を続けているんです。
Five Starのコンセプトは、「地元ファースト」。
「街・アーティスト・メーカーをつなぎ、皆様に多様なアート体験をお届けする」――そんな想いから生まれました。
実は池袋って、すごくアートと縁が深い街なんです。
昭和初期から戦後にかけて、池袋駅の西側エリア(要町・長崎・千早地域)には、たくさんの画家や詩人、彫刻家たちが集まって暮らしていました。100棟以上のアトリエ付きの貸家が建ち並び、延べ500人もの芸術家たちが創作活動に励んでいたんです。
この芸術家コミュニティは、パリの芸術の街「モンパルナス」になぞらえて、「池袋モンパルナス」と呼ばれました。熊谷守一、靉光、寺田政明といった著名な画家たちがここで創作し、日本の美術史に名を刻む作品を生み出したんです。
その歴史を受け継ぎ、現代に蘇らせているのが「池袋モンパルナス回遊美術館」。20年前に立教大学総長(当時)の押見輝男さんが「街が育つ、街で育つ」を合言葉に始めたアートイベントで、2024年には20周年を迎えました。今では池袋の街全体がアートで包まれる一大イベントになっています。
その中でも大きな企画が「IAG AWARDS(池袋アートギャザリング公募展)」。全国から作品を公募して、現役のアーティストたちが審査員となり、地元のギャラリーや企業が賞を出す――まさに地域とアートが一体となったアワードです。
そして、このIAG AWARDSを応援するために、地元の画材メーカーとして手を組んだのがFive Starなんです。
2024年に重要文化財「自由学園明日館」で第1回を開催。2025年5月には池袋回遊派美術展とコラボレーションして、5つの画材ブランド――名村大成堂(国産画筆)、ミューズ(紙)、ウィンザー&ニュートン(英国王室御用達水彩絵具)、クサカベ(透明水彩絵具)、ファーバーカステル(260年以上の歴史を持つドイツの老舗)――が集まりました。
画材の体験コーナーやワークショップはもちろん、美術作家・佐藤紘子さんによる水彩画ライブペインティング、東京藝術大学出身のアーティストユニット「アトリエ21」による100号サイズのクロッキーパフォーマンスなど、臨場感あふれるアートイベントを展開。池袋の街にアートの賑わいを届けています。
【開催中!】IAG AWARDS 2025 ――才能が集まる池袋の舞台
そして今、まさに池袋でアートの祭典が開催されています!
**IAG AWARDS 2025 EXHIBITION(池袋アートギャザリング公募展)**が、2025年11月21日(金)から30日(日)まで、東京芸術劇場5階ギャラリーで開催中です。
全国から応募された作品の中から、厳しい一次・二次審査を通過した入選作家たちの作品が一堂に会する美術展。平面、立体、映像、マンガ的表現まで、ジャンルを超えた多様な才能が集まっています。
会場では、IAG大賞をはじめとする数々のアワードが授与されるほか、来場者投票によるオーディエンス賞も決定。地元ギャラリーや企業からの特別賞もあり、受賞作家には個展開催権などが贈られます。
特に注目なのが、名村大成堂をはじめとするIAGパートナーズ各賞。地域とアート、そして画材メーカーが一体となって、新しい才能を応援する――これがまさに「地元ファースト」の精神です。
豊島区長賞もあり、行政・区民・大学・百貨店・企業・ギャラリーが連携した、池袋ならではのアートの祭典になっています。
開催情報:
- 会期:2025年11月21日(金)〜30日(日)
- 時間:11:00〜19:00(初日は14:00から、最終日は16:00まで)
- 会場:東京芸術劇場5階 Gallery 1&2(池袋駅西口から徒歩3分)
- 入場:無料
池袋にお立ち寄りの際は、ぜひ足を運んでみてください。未来のアート界を担う才能たちの作品に、きっと出会えるはずです。
川口と池袋、二つの街に共通するもの
池袋のFive Starも、川口の幸琳堂も、そして2026年に生まれる川口市立美術館も――根っこにあるのは同じ想いです。
「アートって、遠くにあるものじゃない。日常の中に、街の中に、地域の中にあるものなんだよ」
池袋では画材メーカーと地域が手を取り合って、かつての「池袋モンパルナス」の精神を現代に蘇らせている。川口では幸琳堂さんと美術教室が子どもたちの才能を育み、そして新しくできる美術館が市民とアートをつなぐ拠点になる。
それぞれの場所で、それぞれのやり方で、地域に寄り添ったアート文化が育っているんです。
川口という街の、これから
幸琳堂の萩原社長は、きっと新しい美術館の開館を誰よりも楽しみにしているはず。40年以上、たった一軒の画材店として川口のアート文化を支え続けてきた萩原さんにとって、美術館の誕生は本当に嬉しいことでしょう。
川口という街に、アートの灯がまた一つ、大きく灯ります。
そしてその灯は、幸琳堂のショーウインドウに飾られた子どもたちの絵のように、温かく、優しく、街を照らし続けるはずです。
もしあなたが川口を訪れる機会があれば、ぜひ幸琳堂に立ち寄ってみてください。そして2026年9月には、川口市立美術館へ。
池袋では、今まさにIAG AWARDSが開催中。11月30日までです。
そこには、地域とともに歩むアートの物語が、きっと待っています。
■幸琳堂(株式会社幸琳堂)
〒332-0021 埼玉県川口市西川口2-1-6
代表:萩原裕治
川口市内唯一の画材専門店。2階に幸琳堂美術教室を併設。
■幸琳堂美術教室
講師:山村典子(東京藝術大学 保存修復専攻)
Instagram: @aruithinichi
■川口市立美術館
開館予定:2026年9月
所在地:JR川口駅西口 徒歩2分
建物竣工:2026年1月予定
コンセプト:「市民が集い交流し、すべての人にとって開かれた創造と対話の拠点」
理念:「継承・共生・育成」
公式サイト:https://kawaguchi-moa.jp/
■Five Star 池袋アートマルシェ
主催:名村大成堂
会場:自由学園明日館(重要文化財)
連携イベント:池袋モンパルナス回遊美術館、池袋回遊派美術展、IAG AWARDS後援
参加画材ブランド:名村大成堂、ミューズ、ファーバーカステル、クサカベ、ウィンザー&ニュートン
開催実績:2024年5月(第1回)、2025年5月(第2回)
■池袋モンパルナス回遊美術館
2024年に20周年を迎えた、池袋の地域主体アートイベント
公式サイト:https://kaiyu-art.net/
■IAG AWARDS 2025 EXHIBITION(池袋アートギャザリング公募展) 【開催中!】
会期:2025年11月21日(金)〜30日(日)
時間:11:00〜19:00(初日14:00から、最終日16:00まで)
会場:東京芸術劇場5階 Gallery 1&2(池袋駅西口から徒歩3分)
入場:無料
主催:池袋モンパルナス回遊美術館実行委員会
公式サイト:https://kaiyu-art.net/iag/














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