「汗と情熱が紡ぐ、アナログアートの真髄 — 重要文化財で目撃した、アーティストの鍛錬」

Five Star 2025 イベントレポート

重要文化財で織りなす、アナログアートの真髄


イベント概要

Five Star 2025は、2025年5月23日(金)・24日(土)の2日間、重要文化財・自由学園明日館講堂にて開催されました。Five Star実行委員会が主催し、IAG(池袋アートギャザリング)との共催で実現したこのイベントには、2日間で合計485名(23日:218名、24日:267名)の来場者が足を運び、画材と芸術文化の魅力を堪能しました。

昨年のFive Star 2024から規模を拡大し、今年は5つの画材ブランドが参加。名村大成堂(専門画筆)、ミューズ(専門用紙)、ファーバーカステル(舶来文具)、ウィンザー&ニュートン(舶来絵具)、クサカベ(国産絵具)という、それぞれの分野で歴史と実績を誇るブランドが一堂に会しました。


アトリエ21による圧巻のクロッキーパフォーマンス

横浜からの特別ゲスト

今回のイベントの目玉となったのは、5月24日に実施されたアトリエ21によるP100サイズ(162.0×162.0cm)の大型クロッキーパフォーマンスです。実行委員長として、横浜の画材店「ハヤカワ画材」との友好関係を活かし、横浜で活動するアトリエ21のメンバーをゲストアーティストとしてお招きすることができました。

アトリエ21は、東京藝術大学の同期3名が中心となって運営する横浜の共同アトリエで、クロッキー、水彩画、油絵を指導する本格的な絵画教室も併設しています。今回参加いただいたのは、以下の皆様です:

  • 上田耕造氏(東京藝術大学卒、大学院後期博士課程修了)
  • 岡田高弘氏(東京藝術大学卒、大学院修士課程修了、白日会常任委員)
  • 広田稔氏(東京藝術大学卒、大学院修士課程修了、白日会常任委員)
  • 佐藤陽也氏(明治大学卒、白日会会員)
  • 村田彩氏(モデル、北村美術モデル紹介所所属)

スポーツ選手のような鍛錬の姿

P100という大型サイズのキャンバスに、わずか10分間で人物クロッキーを描き上げるパフォーマンスは、まさに圧巻の一言でした。アーティストたちが真剣に汗をかきながらクロッキーに打ち込む姿は、スポーツ選手が試合で全力を尽くす姿と重なります。

私が今回このパフォーマンスを企画した背景には、「アーティストとはスポーツと変わらず日々の鍛錬からなりたつ」という想いがありました。最近はデジタル・イラストレーションが増え、それはそれで素晴らしい表現手法ですが、アナログで絵を描くアーティストたちが日々どれほどの訓練を積み重ねているのか、その真摯な姿を多くの方に知っていただきたかったのです。

絵を描く様は本当にかっこよく、来場者の皆様は食い入るように見入っていました。実は、販売ブースを設けていたのですが、みんながパフォーマンスに夢中で、商売にならないほどでした(笑)。しかし、これこそがアートの持つ力だと実感した瞬間でもありました。

若手アーティストへの手本

IAGセレクト作家として展示参加してくれた若手アーティストたちにとって、このクロッキーパフォーマンスは何よりの学びとなったはずです。プロフェッショナルなアーティストの制作過程を間近で見ることで、技術だけでなく、作品に向き合う姿勢や集中力の大切さを感じ取ってくれたのではないでしょうか。


佐藤紘子氏によるライブペインティング

5月23日には、クサカベのゲストアーティストとして、画家の佐藤紘子氏が関西から駆けつけてくださいました。佐藤氏によるライブペインティングは、クサカベの高品質な国産絵具の魅力を存分に伝える機会となり、来場者は制作過程をリアルタイムで楽しむことができました。


池袋モンパルナスの系譜を継ぐ文化的意義

Five Star 2025の開催地である池袋は、かつて「池袋モンパルナス」と呼ばれた芸術の聖地でした。今回のイベントでは、以下の三者が集結しました:

  1. 名村大成堂(1940年創業、80余年の歴史を持つ専門画筆メーカー)
  2. 自由学園明日館(フランク・ロイド・ライト設計の重要文化財)
  3. 池袋モンパルナスの精神(芸術文化の伝統)

この組み合わせは、単なるイベントを超えた文化的意義を持ちます。豊島区長も来場され、地域の芸術文化振興への期待を感じました。


参加ブランドと展示

5つの画材ブランド

今回参加した5社は、それぞれが専門性と歴史を持つブランドです:

  • 名村大成堂: 日本を代表する専門画筆メーカー
  • ミューズ: 高品質な専門用紙を提供
  • ファーバーカステル: ドイツの伝統ある舶来文具
  • ウィンザー&ニュートン: イギリスの名門絵具ブランド
  • クサカベ: 日本の誇る国産絵具メーカー

IAGアーティストの作品展示

IAGセレクト作家24名による作品展示も、イベントの見どころの一つでした。重要文化財である明日館の空間に、現代のアーティストたちの作品が並ぶ光景は、歴史と現代の対話を感じさせるものでした。


集客施策の強化

昨年のFive Star 2024の経験を活かし、今年はSNSでの情報発信に加え、画材店や代理店へのフライヤー配布を強化しました。その結果、より多くの方にイベントを知っていただくことができ、2日間で485名の来場を達成しました。


まとめ

Five Star 2025は、画材ブランドの魅力発信、プロフェッショナルなアーティストのパフォーマンス、若手アーティストの育成、そして地域の文化振興という、多層的な価値を生み出すことができたイベントとなりました。

特にアトリエ21の皆様による大型クロッキーパフォーマンスは、「アナログアートの真髄」を伝える貴重な機会となり、来場者の心に深く刻まれたことでしょう。ハヤカワ画材様のご協力なくしては実現できなかった企画であり、改めて感謝申し上げます。

デジタルとアナログが共存する現代において、アーティストが日々積み重ねる鍛錬の姿を伝えることの大切さを、私自身も再認識しました。Five Starは今後も、画材文化とアーティストの魅力を発信し続けてまいります。


イベント詳細

  • 開催日: 2025年5月23日(金)10:00-17:00、24日(土)10:00-16:00
  • 会場: 重要文化財 自由学園明日館 講堂(東京都豊島区西池袋)
  • 来場者数: 485名(23日:218名、24日:267名)
  • 主催: Five Star実行委員会
  • 共催: IAG(池袋アートギャザリング)
  • 参加ブランド: 名村大成堂、ミューズ、ファーバーカステル、ウィンザー&ニュートン、クサカベ
  • ゲストアーティスト: 佐藤紘子氏(画家/クサカベ)、アトリエ21メンバー

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ABOUTこの記事をかいた人

筆メーカー勤務。アートポータルサイト「筆選=Hudesen」運営者。画材専門ブログとして始まった小さな挑戦が、今では画材を中心としたアートポータルサイトへ進化。画材業界とアート文化の架け橋を目指しています。