第8回_厚さのことは、”気にし過ぎないのが一番”のハナシ

紙の厚さって、わかりづらい

紙の厚さって、わかりづらいですよね~。

表記方法がいろいろ有り過ぎるんですよ。

  • 『#200』とか、
  • 『<180>』とか、
  • 『209g/㎡』とか…。

実は全部同じ厚さ

あ…実はこれ、どれも同じ厚さのケント紙のことなんです。

表記方法が変わると…同じ厚さの紙でも数値が変わっちゃうんですよ。

面倒ですよねぇ?

えぇ、すごく面倒ですよ。


全部覚えようとしちゃダメ!

だから、全部覚えようとしちゃダメ!

覚える必要がないものは、覚えないようにしましょう!

とにかく厚さのことは、**”気にし過ぎないのが一番”**なの。

普段よく使う紙の厚さだけ、しっかりご理解いただけてれば良いかと思います。

これだけ覚えればOK

ケント紙なら最もよく使われてる厚さが『#200』。

画用紙なら『厚口』か『特厚口』。

もう、これくらいの知識だけで充分なんです。
ね、簡単でしょう?


ケント紙の厚さバリエーション

もし、ケント紙の…薄めのが欲しいのなら『#150』になるでしょうし、厚いのが欲しいなら『#250』か『#300』になるでしょう。

数字の意味

ちなみに、”#150″は”#200″の**4分の3の厚さ…**って意味です。

“#250″なら”#200″の1.25倍の厚さ

でもこの程度の差だと…厚みの違いはあまり感じられないかもしれませんね。

“#300″ならしっかりしてますよ。”#200″の**1.5倍の厚さ…**って意味ですから。

いかがですか?
ここらへんまでなら、まだ付いて来れてますよね?


“#”は”きん”と読むんです

よく、『厚さっていうから、”㎜”とか”マイクロメートル”の単位を使うんじゃない?』と疑問に思う先生もいらっしゃるようですが、紙の厚さを”長さの単位”で書き表わそうとするのは…まったくのナンセンスなんですよ。

なぜ長さの単位は使わないのか

なぜなら条件によって変わってしまうから…。

温度や湿度、積んであった状態…。

それに…紙問屋さんの断裁機で切った断面とカッターナイフで切った断面では、全然違った厚みに見えることがあります。

精密な計測器を持ってるわけでもないのに、厚さを”長さの単位”で語ろうとするヒトは、ドシロウトです!

昔からの表記が一番

ですのでみなさんは、とにかく昔から使われている表記方法で呼ぶのが一番なわけです。

ケント紙なら#200!
画用紙なら厚口か特厚口!

めでたしめでたし!


#200の読み方

さて、『#200って何て読むの!?』という声が聞こえて来そうなので、お答えしておきましょう。

これを我々画材業界人は『にひゃっきん』と読みます。

つまり、“#”は”きん”と読むんです。

業界でも変化が…

画材業界では常識(のはず)ですが、紙業界全体ではそうでもないみたい…。

紙を専門に扱うお店の若い人達の中では…#200と書いて『にひゃくばん』とか『にひゃくばんて(番手)』と読む人も増えて来てるみたい…。

う~む。我々のアタマが古過ぎるのかなぁ?

ウチでは「にひゃっきん」

でも、ウチでは『にひゃっきん』です
ウチと取り引きしてる美術用紙専門の紙問屋さんも『にひゃっきん』です。

電話注文の際は

若い先生方にはこの読み方は強制しません。

もちろん、『にひゃっきん』と読んでいただければありがたいですが、電話でのご注文なら『シャープにひゃく』で全然オッケー。

だって、普通に読めば”シャープにひゃく”ですもんね。

注意
『ハッシュタグにひゃく』って言われちゃうと、電話を受けてる側が笑っちゃいますからご勘弁願います。

にひゃっきん』か『シャープにひゃく』でお願いします。


紙業界では、『厚さ=重さ』

“<>”は”kg”

さて、上にも書きましたが#200の紙を**<180>**と表記する場合もあります。

『<180>って何?どう読むの!?』って思いますよね?

お答えしましょう。
<180>と書いて『180キロ』と読みます。

つまり**”<>”は”kg”を表わしてる**んです。

連量(れんりょう)とは

これは、その紙を1,000枚の束にしたときの重量を表すもので…専門用語で『連量(れんりょう)』と呼ばれる表記方法です。

(こんなこと、イチイチ覚えなくて大丈夫です)

紙業界全体で見ると、圧倒的にこの連量表記がメインです。

一番メインな表記だからこそ、単位記号の”kg”を省略しちゃってるんですね。

<>で囲めば、もうこれは『千枚の束の重さを、キログラムで表わした数値』って、紙業界の全員がわかるんです。


なぜ1,000枚の束?

ちなみに、『なんで千枚の束にしなきゃならないの?重いじゃん』って思われるかも知れませんが、紙業界(製紙工場⇔紙問屋)での取り引き単位は1,000枚なんですよ。

1,000枚の束ひとつを『1連(いちれん)』と数えるそうです。

実際の包装

もちろん必ずしも1,000枚でひとつの包みにしてるのではなく、100枚包みを10束とか…250枚包みを4束にして、それをひとまとめにして作業してらっしゃいます。


現場で最優先なのは「重さ」

その”紙業界”の作業現場で最優先で考えられるのが…重たい紙の移動と保管

つまり、現場の人のアタマの中にあるのは…紙の厚さの事なんかじゃなく紙の重さの事だけなんですよ。

フォークリフト作業

紙問屋などで扱う紙は、ほぼすべてが四六判の大きさの紙です。

その千枚の束は、とても人の力じゃ持ち上げられませんよね?

ですので、すべてがフォークリフトでの作業になります。

パレットと呼ばれるフォークリフト専用の台の上に何束も重ねて運ぶんですよ。

だから…厚さなんかよりも重さを最優先で考えるの、当たり前ですよね?

必要な情報は「重さ」

そんな彼らにとって、千枚の束の重さが『<>』の記号でくくって明記してあれば、もうそれだけでその束について一番知りたい情報である”重さ”がわかるんです。

だから、”㎜”や”マイクロメートル”の単位記号は、現場ではまったく必要じゃない…って、わかってもらえますよね?

紙業界では、『厚さ=重さ』なんです。

そして…何度も出て来ている『#=きん』も、実は**”重さの単位”**なんです。

(『#=きん』の詳しいハナシはまた別の機会に…)


もうひとつの表記:坪量

最後に、もうひとつの表記の『209g/㎡』。

これは読んで字のごとく、『1平方メートルあたりの紙の重さ』です。

もちろん、覚えなくていい表記です。

でも、一応解説を…。

計算方法

<180>のケント紙は、1,000枚束で180kgですから、1枚の重さは180g

四六判(0.788×1.091m)のケント紙の面積は0.86㎡ですから…1平方メートルの重さを知りたければ、面積で割ればよい。

180÷0.86=209(g/㎡)

坪量(つぼりょう)

この表記方法は『坪量(つぼりょう)』と呼ばれるものです。

この場合の”坪”は、土地の広さの単位となる『3.3㎡』のことではありません。

『坪』という一文字が**”正方形”という意味**を持つそうな…。

坪量…は正しくは米坪量(べいつぼりょう)と言い、この”べい”は…もちろんアメリカのことではなく”メートル”の意味です。

(当然、こんなことは覚える必要はありません)


画材業界の人って紙のことにばかりに詳しい訳じゃない

普段…紙のことしか考えてない紙業界の人に対して、画材業界の人って紙のことにばかりに詳しい訳じゃないですから、時々表記があやふやになります。

よくある間違い

紙問屋宛てのFAX発注書を書く時に…うっかり**<180g>**とか、有り得ない書き間違いをしちゃったりします。

※注意
<>で囲めばkgなのは当たり前。そこにわざわざ書き込んだ単位が『g』に書き間違えられてたら、紙問屋さんにはこちらの要望はまったく伝わりません。

美術の先生方も、こういう間違いをしょっちゅうして来てくれます。


結論:余計なことは考えなくていい

だ・か・ら、余計なことは書かないでいいんです。
余計なことは考えなくていいんです。

kgとかg/㎡とか、そういう単位は覚えなくていいんです!

ケント紙ならば『#200』だけでいいんです!

画用紙ならば『厚口』か『特厚口』のどちらか!


坪量が気になる人のために

どうしても坪量が気になる人のために、第8回【資料編】に早見表を書いておきました。

坪量を調べる際にはそちらをご覧ください。

坪量の限界

輸入紙であるアルシュ水彩紙やMBM木炭紙は、国産の規格とは異なる大きさで出来ていますので、厚みを表すひとつの目安として坪量表記が必要になります。

でも実際には…坪量表記はほとんど活用されていませんし、種類の異なる紙の厚みの比較にも…言うほど役には立ちません!

ぶっちゃけ、坪量のことを知っててもほとんど意味無いんです。

単位は省略しない

この坪量表記は紙業界全体から見ると、連量よりもマイナーな表記方法なので、単位記号は省略せずに書く必要があります

(読む時には『/㎡』は省略し、”グラム”までで大丈夫です)


【第8回終わり】


【第8回資料編】

参考までに、よく使われる紙のデータを書いておきました。


表記の説明

『<>』は連量

四六判の紙を1,000枚まとめた重さをkgで表記。

なお、連量を**”キロ連量”**と呼ぶ場合もありますが、まったく同じ意味です。

ここで言うキロは”kg”のことでなく、千枚束の”千”のこと

というのも…昭和初期の頃に1連という単位が1,000枚ではない時代があり、現在は千枚単位であることを強調して『キロ連量』という言い方にしているわけです。

『g/㎡』は坪量

その紙の1平方メートルあたりの重さをgで表記。

坪量は米坪量とも呼ばれますがまったく同じ意味です。

過去に尺坪量という単位(1平方尺あたりの重さ)が使われていた時代があり、現在はメートル(”米”と書きます)単位であることを強調して『米坪量』という言い方にしているわけです。


◎ケント紙

  • #150 = <135> = 157g/㎡
  • #200 = <180> = 209g/㎡
  • #250 = <225> = 261g/㎡
  • #300 = <270> = 314g/㎡

#と<>の関係

みなさん、おそらく薄々お気づきでしょう。

どちらも重さの単位なわけですから、『#』と『<>』には相関関係があります。

『#』の数値に0.9を掛けた値が、その紙の1,000枚の束のkg表示の重さになるのです。

(この計算方法も、覚える必要はありません。『ケント紙は#200が基本!』とだけ覚えていただければオッケーです)


◎画用紙

●シリウス

  • 厚口 = 168g/㎡
  • 特厚口 = 220g/㎡

※美術出版のカタログの数値は間違いです(訂正依頼済み)。

●サンフラワーペーパー

  • A画 = 163g/㎡
  • M画 = 211g/㎡

●白象画学紙

  • 薄口 = 102g/㎡
  • 厚口 = 151g/㎡
  • 特厚口 = 205g/㎡

◎上質紙

  • <55> = 64g/㎡
  • <70> = 81g/㎡
  • <90> = 105g/㎡
  • <110> = 128g/㎡
  • <135> = 157g/㎡

※参考

  • 上質紙の**<55>**は、いわゆるコピー用紙の厚さ。模造紙で言うと薄口。
  • **<70>**が模造紙の並口。ノートの紙の厚さもこのあたり。
  • **<90>**は模造紙の厚口。
  • **<135>**は、だいたい名刺くらいの厚さ。

◎水彩紙

●ワーグマン

  • 厚口 = <172> = 200g/㎡
  • 特厚口 = <210> = 245g/㎡

●マーメイドリップル

  • 特厚口 = 235g/㎡

●ワトソン

  • 厚口 = <163> = 190g/㎡
  • 特厚口 = <205> = 239g/㎡

●アルシュ

  • 185g/㎡
  • 300g/㎡

●モンヴァル水彩紙(モンヴァルキャンソン)

  • 185g/㎡

◎木炭紙

●MBM

  • 105g/㎡

●アトリエ木炭紙

  • 107g/㎡

●キャンソン木炭紙

  • 100g/㎡

◎色画用紙など

●ニューカラーR全71色

  • <105> = 122g/㎡

●タント全200色

  • <70> = 81g/㎡
  • <100> = 116g/㎡

●NTラシャ全120色

  • <100> = 116g/㎡

●紀州色上質全33色

  • 厚口 = <78> = 91g/㎡
  • 特厚口 = <107> = 124g/㎡

●マーメイド全60色

  • <153> = 178g/㎡

●ミューズコットン全131色

  • <118> = 137g/㎡

●キャンソンミタント(カラーキャンソン)全30色

  • 160g/㎡

●カラーケントケンラン全44色

  • <180> = 209g/㎡

●レザック’66全50色

  • <175> = 203g/㎡

※注意

『<>』(連量)の書いていない紙は、大きさが四六判ではない紙です。

紙の大きさが違うと連量での比較ができませんから省きました。


【第8回資料編終わり】

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