紙の厚さって、わかりづらい
紙の厚さって、わかりづらいですよね~。
表記方法がいろいろ有り過ぎるんですよ。
- 『#200』とか、
- 『<180>』とか、
- 『209g/㎡』とか…。
実は全部同じ厚さ
あ…実はこれ、どれも同じ厚さのケント紙のことなんです。
表記方法が変わると…同じ厚さの紙でも数値が変わっちゃうんですよ。
面倒ですよねぇ?
えぇ、すごく面倒ですよ。
全部覚えようとしちゃダメ!
だから、全部覚えようとしちゃダメ!
覚える必要がないものは、覚えないようにしましょう!
とにかく厚さのことは、**”気にし過ぎないのが一番”**なの。
普段よく使う紙の厚さだけ、しっかりご理解いただけてれば良いかと思います。
これだけ覚えればOK
ケント紙なら最もよく使われてる厚さが『#200』。
画用紙なら『厚口』か『特厚口』。
もう、これくらいの知識だけで充分なんです。
ね、簡単でしょう?
ケント紙の厚さバリエーション
もし、ケント紙の…薄めのが欲しいのなら『#150』になるでしょうし、厚いのが欲しいなら『#250』か『#300』になるでしょう。
数字の意味
ちなみに、”#150″は”#200″の**4分の3の厚さ…**って意味です。
“#250″なら”#200″の1.25倍の厚さ。
でもこの程度の差だと…厚みの違いはあまり感じられないかもしれませんね。
“#300″ならしっかりしてますよ。”#200″の**1.5倍の厚さ…**って意味ですから。
いかがですか?
ここらへんまでなら、まだ付いて来れてますよね?
“#”は”きん”と読むんです
よく、『厚さっていうから、”㎜”とか”マイクロメートル”の単位を使うんじゃない?』と疑問に思う先生もいらっしゃるようですが、紙の厚さを”長さの単位”で書き表わそうとするのは…まったくのナンセンスなんですよ。
なぜ長さの単位は使わないのか
なぜなら条件によって変わってしまうから…。
温度や湿度、積んであった状態…。
それに…紙問屋さんの断裁機で切った断面とカッターナイフで切った断面では、全然違った厚みに見えることがあります。
精密な計測器を持ってるわけでもないのに、厚さを”長さの単位”で語ろうとするヒトは、ドシロウトです!
昔からの表記が一番
ですのでみなさんは、とにかく昔から使われている表記方法で呼ぶのが一番なわけです。
ケント紙なら#200!
画用紙なら厚口か特厚口!
めでたしめでたし!
#200の読み方
さて、『#200って何て読むの!?』という声が聞こえて来そうなので、お答えしておきましょう。
これを我々画材業界人は『にひゃっきん』と読みます。
つまり、“#”は”きん”と読むんです。
業界でも変化が…
画材業界では常識(のはず)ですが、紙業界全体ではそうでもないみたい…。
紙を専門に扱うお店の若い人達の中では…#200と書いて『にひゃくばん』とか『にひゃくばんて(番手)』と読む人も増えて来てるみたい…。
う~む。我々のアタマが古過ぎるのかなぁ?
ウチでは「にひゃっきん」
でも、ウチでは『にひゃっきん』です。
ウチと取り引きしてる美術用紙専門の紙問屋さんも『にひゃっきん』です。
電話注文の際は
若い先生方にはこの読み方は強制しません。
もちろん、『にひゃっきん』と読んでいただければありがたいですが、電話でのご注文なら『シャープにひゃく』で全然オッケー。
だって、普通に読めば”シャープにひゃく”ですもんね。
注意
『ハッシュタグにひゃく』って言われちゃうと、電話を受けてる側が笑っちゃいますからご勘弁願います。
『にひゃっきん』か『シャープにひゃく』でお願いします。
紙業界では、『厚さ=重さ』
“<>”は”kg”
さて、上にも書きましたが#200の紙を**<180>**と表記する場合もあります。
『<180>って何?どう読むの!?』って思いますよね?
お答えしましょう。
<180>と書いて『180キロ』と読みます。
つまり**”<>”は”kg”を表わしてる**んです。
連量(れんりょう)とは
これは、その紙を1,000枚の束にしたときの重量を表すもので…専門用語で『連量(れんりょう)』と呼ばれる表記方法です。
(こんなこと、イチイチ覚えなくて大丈夫です)
紙業界全体で見ると、圧倒的にこの連量表記がメインです。
一番メインな表記だからこそ、単位記号の”kg”を省略しちゃってるんですね。
<>で囲めば、もうこれは『千枚の束の重さを、キログラムで表わした数値』って、紙業界の全員がわかるんです。
なぜ1,000枚の束?
ちなみに、『なんで千枚の束にしなきゃならないの?重いじゃん』って思われるかも知れませんが、紙業界(製紙工場⇔紙問屋)での取り引き単位は1,000枚なんですよ。
1,000枚の束ひとつを『1連(いちれん)』と数えるそうです。
実際の包装
もちろん必ずしも1,000枚でひとつの包みにしてるのではなく、100枚包みを10束とか…250枚包みを4束にして、それをひとまとめにして作業してらっしゃいます。
現場で最優先なのは「重さ」
その”紙業界”の作業現場で最優先で考えられるのが…重たい紙の移動と保管。
つまり、現場の人のアタマの中にあるのは…紙の厚さの事なんかじゃなく紙の重さの事だけなんですよ。
フォークリフト作業
紙問屋などで扱う紙は、ほぼすべてが四六判の大きさの紙です。
その千枚の束は、とても人の力じゃ持ち上げられませんよね?
ですので、すべてがフォークリフトでの作業になります。
パレットと呼ばれるフォークリフト専用の台の上に何束も重ねて運ぶんですよ。
だから…厚さなんかよりも重さを最優先で考えるの、当たり前ですよね?
必要な情報は「重さ」
そんな彼らにとって、千枚の束の重さが『<>』の記号でくくって明記してあれば、もうそれだけでその束について一番知りたい情報である”重さ”がわかるんです。
だから、”㎜”や”マイクロメートル”の単位記号は、現場ではまったく必要じゃない…って、わかってもらえますよね?
紙業界では、『厚さ=重さ』なんです。
そして…何度も出て来ている『#=きん』も、実は**”重さの単位”**なんです。
(『#=きん』の詳しいハナシはまた別の機会に…)
もうひとつの表記:坪量
最後に、もうひとつの表記の『209g/㎡』。
これは読んで字のごとく、『1平方メートルあたりの紙の重さ』です。
もちろん、覚えなくていい表記です。
でも、一応解説を…。
計算方法
<180>のケント紙は、1,000枚束で180kgですから、1枚の重さは180g。
四六判(0.788×1.091m)のケント紙の面積は0.86㎡ですから…1平方メートルの重さを知りたければ、面積で割ればよい。
180÷0.86=209(g/㎡)
坪量(つぼりょう)
この表記方法は『坪量(つぼりょう)』と呼ばれるものです。
この場合の”坪”は、土地の広さの単位となる『3.3㎡』のことではありません。
『坪』という一文字が**”正方形”という意味**を持つそうな…。
坪量…は正しくは米坪量(べいつぼりょう)と言い、この”べい”は…もちろんアメリカのことではなく”メートル”の意味です。
(当然、こんなことは覚える必要はありません)
画材業界の人って紙のことにばかりに詳しい訳じゃない
普段…紙のことしか考えてない紙業界の人に対して、画材業界の人って紙のことにばかりに詳しい訳じゃないですから、時々表記があやふやになります。
よくある間違い
紙問屋宛てのFAX発注書を書く時に…うっかり**<180g>**とか、有り得ない書き間違いをしちゃったりします。
※注意
<>で囲めばkgなのは当たり前。そこにわざわざ書き込んだ単位が『g』に書き間違えられてたら、紙問屋さんにはこちらの要望はまったく伝わりません。
美術の先生方も、こういう間違いをしょっちゅうして来てくれます。
結論:余計なことは考えなくていい
だ・か・ら、余計なことは書かないでいいんです。
余計なことは考えなくていいんです。
kgとかg/㎡とか、そういう単位は覚えなくていいんです!
ケント紙ならば『#200』だけでいいんです!
画用紙ならば『厚口』か『特厚口』のどちらか!
坪量が気になる人のために
どうしても坪量が気になる人のために、第8回【資料編】に早見表を書いておきました。
坪量を調べる際にはそちらをご覧ください。
坪量の限界
輸入紙であるアルシュ水彩紙やMBM木炭紙は、国産の規格とは異なる大きさで出来ていますので、厚みを表すひとつの目安として坪量表記が必要になります。
でも実際には…坪量表記はほとんど活用されていませんし、種類の異なる紙の厚みの比較にも…言うほど役には立ちません!
ぶっちゃけ、坪量のことを知っててもほとんど意味無いんです。
単位は省略しない
この坪量表記は紙業界全体から見ると、連量よりもマイナーな表記方法なので、単位記号は省略せずに書く必要があります。
(読む時には『/㎡』は省略し、”グラム”までで大丈夫です)
【第8回終わり】
【第8回資料編】
参考までに、よく使われる紙のデータを書いておきました。
表記の説明
『<>』は連量
四六判の紙を1,000枚まとめた重さをkgで表記。
なお、連量を**”キロ連量”**と呼ぶ場合もありますが、まったく同じ意味です。
ここで言うキロは”kg”のことでなく、千枚束の”千”のこと。
というのも…昭和初期の頃に1連という単位が1,000枚ではない時代があり、現在は千枚単位であることを強調して『キロ連量』という言い方にしているわけです。
『g/㎡』は坪量
その紙の1平方メートルあたりの重さをgで表記。
坪量は米坪量とも呼ばれますがまったく同じ意味です。
過去に尺坪量という単位(1平方尺あたりの重さ)が使われていた時代があり、現在はメートル(”米”と書きます)単位であることを強調して『米坪量』という言い方にしているわけです。
◎ケント紙
- #150 = <135> = 157g/㎡
- #200 = <180> = 209g/㎡
- #250 = <225> = 261g/㎡
- #300 = <270> = 314g/㎡
#と<>の関係
みなさん、おそらく薄々お気づきでしょう。
どちらも重さの単位なわけですから、『#』と『<>』には相関関係があります。
『#』の数値に0.9を掛けた値が、その紙の1,000枚の束のkg表示の重さになるのです。
(この計算方法も、覚える必要はありません。『ケント紙は#200が基本!』とだけ覚えていただければオッケーです)
◎画用紙
●シリウス
- 厚口 = 168g/㎡
- 特厚口 = 220g/㎡
※美術出版のカタログの数値は間違いです(訂正依頼済み)。
●サンフラワーペーパー
- A画 = 163g/㎡
- M画 = 211g/㎡
●白象画学紙
- 薄口 = 102g/㎡
- 厚口 = 151g/㎡
- 特厚口 = 205g/㎡
◎上質紙
- <55> = 64g/㎡
- <70> = 81g/㎡
- <90> = 105g/㎡
- <110> = 128g/㎡
- <135> = 157g/㎡
※参考
- 上質紙の**<55>**は、いわゆるコピー用紙の厚さ。模造紙で言うと薄口。
- **<70>**が模造紙の並口。ノートの紙の厚さもこのあたり。
- **<90>**は模造紙の厚口。
- **<135>**は、だいたい名刺くらいの厚さ。
◎水彩紙
●ワーグマン
- 厚口 = <172> = 200g/㎡
- 特厚口 = <210> = 245g/㎡
●マーメイドリップル
- 特厚口 = 235g/㎡
●ワトソン
- 厚口 = <163> = 190g/㎡
- 特厚口 = <205> = 239g/㎡
●アルシュ
- 185g/㎡
- 300g/㎡
●モンヴァル水彩紙(モンヴァルキャンソン)
- 185g/㎡
◎木炭紙
●MBM
- 105g/㎡
●アトリエ木炭紙
- 107g/㎡
●キャンソン木炭紙
- 100g/㎡
◎色画用紙など
●ニューカラーR全71色
- <105> = 122g/㎡
●タント全200色
- <70> = 81g/㎡
- <100> = 116g/㎡
●NTラシャ全120色
- <100> = 116g/㎡
●紀州色上質全33色
- 厚口 = <78> = 91g/㎡
- 特厚口 = <107> = 124g/㎡
●マーメイド全60色
- <153> = 178g/㎡
●ミューズコットン全131色
- <118> = 137g/㎡
●キャンソンミタント(カラーキャンソン)全30色
- 160g/㎡
●カラーケントケンラン全44色
- <180> = 209g/㎡
●レザック’66全50色
- <175> = 203g/㎡
※注意
『<>』(連量)の書いていない紙は、大きさが四六判ではない紙です。
紙の大きさが違うと連量での比較ができませんから省きました。
【第8回資料編終わり】











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