それでは、3ダースさんから来たメルマガ「画材沼-知識の確認-」
を皆様にシェアーしたいと思います。
第4話の内容は、我々画材沼サイドの人間は、世の中全体から見たら珍しい…
「製品ではなく素材」を扱っているという話です。
この話も奥が深く私がこのメルマガを読んだ時ショックを受けました。
考えてみると世の中で通常売られているものを我々の世界でやると別注扱いになり
我々の世界で通常扱っている商品を世の中でやると別注扱いになる。
※頭が整理出来てなくすみません。
私個人としてはこの疑問が解消されてすっきりした気持ちです。
しかし、繰り返しますが「画材沼-知識の確認-」は、3ダースさんを理解している方
のみのメルマガの為、一般向けではありません。
その辺りを理解して頂いた方のみ読んで頂き知識を深めていただけたら幸いです。
それでは、第4話『紙の大きさのハナシ』を始めます(笑)
ケント紙や画用紙は『素材』
『3ダースさん、A列とかB列のハナシはもう第1回でとっくに聞きましたよ!』
って思われたでしょうが、あれはあくまでも製品として加工された…
“仕上がり寸法”のハナシ。
書籍や雑誌やノートとして製本されたものや、チラシやパンフレットやポスターなどの印刷物…。
そういう、“製品としての仕上がり寸法”をJIS規格で決めているのです。
参考:関東経済産業局
一方、我々画材屋が売っているケント紙や画用紙などの『紙』は、
JISの仕上がり寸法であるA列1番やB列1番ではありません。
JISのB1(728×1030)が切り出せるように、B1規格サイズよりも
敢えてひとまわり大きく作ってあります。
その大きさを通称で『全判』と呼ぶ場合もありますが、我々はそうは呼びません。
誤発注の原因になりかねないので、我々はなるべく正式名称で呼ぶようにしています。

せっかくJISという全国統一の規格で“紙の仕上がり寸法”を決めているのに、
ケント紙や画用紙はなぜそれを無視して…ひとまわり大きく作っているのでしょうか?

ぶっちゃけ、『製品』じゃない…ってことです😅
ケント紙や画用紙は、スケッチブックやイラストボードといった“製品”
になる前の“素材”であるわけだから、
製品としての仕上り寸法には作られていないのです。
例えばB1のイラストボードを製造する際に、素材であるはずのケント紙や画用紙が…
もしB1規格ぴったりの大きさだったとしたら、
B1サイズのイラストボードなんて…うまく作れませんよね。
ボード芯に紙を貼る時に少しでもズレちゃったら…商品になりません。
だから…B1規格よりひとまわり大きな素材の紙を用意して、
やはりひとまわり大きなボード芯のオモテと裏に…
少しズレても気にしないくらいの気持ちで貼り、
周りを断ち落としてB1サイズに仕上げる方がはるかに簡単です。
また、学校の美術の授業では…
ケント紙や画用紙といった“素材”に手を加えて『作品』を作らせますよね?
その、手を加える…という工程には『絵を描く』『着色する』の他に、
『水張りをする』とか『紙をカットする』という作業も有り得ます。
だから、授業で使う紙を最初っからA3とかB3とかに切り揃えちゃってあると、
そういう作品制作上の“自由な作業や自由な発想”を制限してしまうことにも…なるわけです。

もう少し具体的なハナシでご説明しましょうか。
プロのみなさんが求めるケント紙
我々画材屋は…プロのデザイナーやイラストレーターのお客様も相手にしております!
(最近は“そういう方面”からの『紙』の注文はめっきり減りましたが( ノД`)シクシク…)
彼らはやがて“製品として印刷される物”の、原稿(原画)を作っているわけです。
たとえ刷り上がる製品と“同寸法の原画”を描くとしても、
その原画寸法より大きな紙を使って描くのが当然ですよね?
まわりにある程度の余白を取って…。
それに、原画からそのまま『版』を作るのならば、原画のまわりの余白部分にトリムマーク
(俗に“トンボ”と呼ばれるもの。多色の版のズレのチェックや印刷後の断裁のために必要)
を入れなければなりません。
参考:井上紙袋
そういうわけで、
原画の寸法よりひとまわり大きな紙が必要になるわけです。

『てめぇ、余白ねえじゃねぇか!』って怒鳴られ、
以後出入り禁止にされちゃいますわ。
プロのみなさんが求めるケント紙は、
『四六判』か『四六判の2切(にさい)』か『四六判の4切(よんさい)』
の大きさなのです。
あくまでも“素材”ですので…。
また、その原稿から版をおこして印刷する際にも、
“印刷用紙”は仕上がりサイズよりも大きいものを使います。
印刷用紙も製品になる前の“素材”ですからね。
“四六判”も、JIS規格
印刷工場の印刷機ってご覧になったことありますか?
いわゆるコピー機やプリンターのことじゃないですよ。
印刷工場の印刷機には、小振りなものもありますが、
メインの仕事をしてくれる『オフセット輪転機』は…バス1台分くらいの大きさなんです。
参考:三菱重工
その機械に入れる印刷用紙は、四六判かB本判…。
つまり、B1規格サイズよりひとまわり大きい紙を使います。
コピー機やプリンターには、JIS規格の用紙を入れますよね?
そしてその大きさのまま刷り上がります。
印刷工場の印刷機はコピーやプリンターとは違い、

刷り上がった後に紙を揃えて…
トリムマークを頼りに“断裁”するんです。
つまり、“切って規格サイズに仕上げる”んです。
切って仕上げるんだから、
印刷する前の“素材”である印刷用紙は…
仕上がり寸法より大きくないとダメですよね?
例えば、本を作る時などは1枚の大きな紙に16ページ分をまとめて印刷しちゃいます
(この、ページを配置する作業を“面付け”といいます。32ページの場合もあります)。
参考:株式会社ウイル・コーポレーション
両面に刷られた紙を、半分に折り、90°回して半分に折り、また90°回して半分に折って、
3辺を断ち落とせば16ページ分の薄い冊子が出来ますよね。
これをいくつも束ねれば本が作れます。
→実際には、製本をしてから断裁作業をします。
ちなみに、文庫本は…出版社によっては現在も昔ながらの“2辺断ち落とし”の製法なので…
上の辺が不揃いなものが見られます。
仕上がり寸法をJIS規格に合わせるなら、断ち落として小さくなる分を見越して…
規格より大きな紙を用意しなければなりませんよね?

そういうわけで、印刷工場が仕入れる印刷用紙はすべて、
“大きな紙”なのです。
そのほとんどが『四六判』なのです。
実はこの“四六判”も、JIS規格で決められているんですよ。
『仕上がり寸法』とは別な項目で、
『原紙寸法』という項目に書いてあります。
- 四六判
- B本判
- 菊判(636×939)
- A本判(625×880)
- ハトロン判(900×1200)
の5種類が、原紙寸法としてJISで定められています。
もちろん先生達は、こんなことも覚える必要はありません。
でも、みんなが知ってるA列やB列の“製品”が出来上がる前の段階に、
規格より大きな『原紙寸法』の“素材”が必要である…ってことはご理解ください。
ひとまわり大きな紙がないと、規格の製品は作れません!
“普通のヒト達”と“紙を原紙のまま扱う人達”
印刷工場を経由して“製品”として世の中に出ていく印刷物とは違って、
授業で使うケント紙や画用紙は…
印刷する工程も周りを断ち落とす工程も無いので、
“原紙寸法のまま”…紙問屋→画材問屋→画材屋と、流通して来ます。

2切や4切や8切という単純な断裁工程は紙問屋さんでやってくれますが、
こちらから特別に注文を出さない限り…
JISの仕上がり規格には断裁してくれないのです!
※JISの仕上がり規格に断裁すると、素材ではなく、製品になるため、値段が高くなります
→詳しくは次回以降

ケント紙や画用紙は、
多くの人が知っているA列とかB列といった
“仕上がり寸法”ではなく、“原紙寸法”と…“
2切や4切や8切という単純な断裁寸法”で、
流通しているのです。
“素材”ですから…。
『製品として流通している紙』…
つまりA3とかB3とかしか見たことがない“普通のヒト達”は、
それらの製品になる前の素材の状態の紙が…
『仕上がり寸法』よりも大きく作られてるなんて、
知るよしも無いんでしょうね。
でも、思いのほか…
美術教員のみなさんも『普通のヒト』と同レベルなんじゃぁないですかぁ?

A列やB列とは違う“原紙寸法”で出来ているっていうことを
イマイチ理解出来てなかったり、
逆に画用紙やケント紙にA3やB3のサイズが…
“既製品とかで当たり前に存在するはず”って
思ってらっしゃるんじゃないですか?
A3やB3の画用紙やケント紙は、当たり前には存在してません!
だって、“素材”なんですから!
素材だったら、原紙寸法なのが当然ですから!
家電量販店やホームセンターに
『A3』『B4』『A4』『B5』のコピー用紙が大量に積んであるようなイメージで画用紙のことを
考えてやしませんか?
確かに『色上質紙A4パック』とかは画材屋にも置いてあったりしますよ、“製品”として。
でも、ケント紙や画用紙は…これからそこに何かを描いたりするための“素材”なんです。
どうせなら面積が大きい方がいいんだし、わざわざ仕上がり規格に合わせて切り縮めちゃう…
なんて、意味わかりませんよ!

教材を納品する画材屋は、世の中全体から見たら珍しい…
“紙を原紙のまま扱う人達”なのです。
(あと、文房具屋で売ってる“模造紙”も…そうですね)
製紙工場、紙問屋、印刷工場の人くらいしか触らない、仕上がり寸法に加工する前の
“原紙”を、普通に使用している人達なんです。
ですので…
美術教員のみなさんも、
製紙工場の人や紙問屋の人や印刷工場の人達と同様に、
A列B列という仕上がり規格だけじゃない…
“それ以外の紙の大きさ”が有るってことを
理解出来る人になっていただきたい。
原紙寸法のままで流通しているという…世の中的にはごく稀な存在であるため、
ポスターフレームに“画用紙サイズ”の寸法がなかなか存在しなかった…という現実も、
ようやくご納得いただけたことでしょう。
現在は『画用紙四つ切用』や『画用紙八つ切用』のポスターフレームは、一応…存在します。
【第4話終わり】
ケント紙の通称“全判”(788×1091)を『四六判(しろくばん)』
画用紙の通称“全判”(765×1085)を『B本判(びーほんばん)』
と、呼んでいます。
(先生たちは、こんなことをいちいち覚えなくて大丈夫です)