少し前までは絵画の趣味と言えば油彩画という感じでしたが最近は、水彩画を愛する人が増えているようです。
もともと日本には水墨画の歴史があります。水の流れを操り描き出す水彩画は、日本人にぴったり!
その中でも透明感あふれる美しい透明水彩。
透明水彩に魅了され「やってみよう」と思う方多いのではないでしょうか?
「趣味は水彩画です」なんて言ってみたいけど難しそうだし専門店にいざ絵の具を買いに行ったら
色々な絵具メーカーがあり迷っているのでは?
お任せください!
よく店頭で筆整理(筆メーカーでもあるので)をしていると一番よく質問を受けるのが水彩画というジャンル!
今度は水彩画の材料を総合画材問屋の立場から自分なりにわかりやすく解説致します。
この記事が皆様の水彩選びの指標になれたら幸いです。
では、解説していきますね。
ジャンル別絵具の性質の違い
1. 絵具とは?
絵具は顕色材+展色材(+助剤)からつくられています。
簡単に言うと
- 顕色材は「顔料」(色の粉)
- 展色材は「接着剤」
- 助剤(滑らかにする溶液)は乾燥促進剤や防腐剤や湿潤剤
絵具の種類 | 内訳 |
水彩絵具 | 顔料+水溶性の糊(アラビヤゴム等)と、乾燥を調整する糖類、グリセリン。 |
油彩絵具 | 顔料+油(乾性油・加工油)、樹脂と厚塗りやタッチをつけるためのロウ類。 |
日本画絵具 | 顔料+膠(ゼラチン) |
アクリル絵具 | 顔料+合成樹脂(アクリル樹脂、PVA(ポリビニールアセテ-ト))と、乾燥を調整するグリセリンやエチレングリコール。 |
テンペラ絵具 | 顔料+卵黄 |
パステル | 顔料+顔料を棒状に固めるための糊・トラガントゴム等。 |
オイルパス・クレヨン | 顔料+動物・植物性油脂とパラフィンやロウ類。 油脂分の多いものがオイルパスで、パラフィンやロウ類の多いものがクレヨンです。 |
以上、これらの展色材(接着剤)が固まることで顕色材(顔料)を固着させ、
剥離を防いでいます。
1-1. 顕色材(顔料)とは?
顔料は、大きくわけて2種類あります。
- 無機顔料
- 有機顔料
①無機顔料は、土/鉱物/金属化合物から作られています。
(水銀/コバルト/カドミウム/ラピスラズリ/珊瑚など)
②有機顔料は、植物の色素/石油化学合成物質などから作られています。
(有機顔料は植物などから染料を作り、体質顔料という透明な顔料に色を染めこんで作ります。)
有機顔料が一般的に流通しています。
フェノールが含まれているので、絶対に口に含まないように小さなお子さんには気を付ける
必要があります。
1-2. 展色材(接着剤)とは?
展色剤(vehicle)とは、絵具の成分のうち顔料と練り合わせ,その均質な分散や接着を助けるために働くものです。
おもなものは接着剤として働く固形成分(アラビアゴム,ダンマル樹脂,アクリル樹脂など),
溶媒(水,乾性油など),増粘剤,界面活性剤などがあります。
2. 水彩絵具とは?
一般的に水彩と言いますと透明水彩を指さすことが多いようですが水彩絵具は大きく分けて
透明水彩絵具(ウォーターカラー)と不透明水彩絵具(ガッシュ)に分類します。
透明水彩か不透明水彩かに分かれます。
透明水彩・不透明水彩ともに、主原料は顔料と展色材であるアカシア樹脂(アラビアガム)や
加工澱粉(デキストリン)でそのほかに保湿剤や防腐剤などを含みます。
伝統的製法では保湿剤として蜂蜜や水あめが使われていましたが産業革命以後に工業的に生産されるようになってからは
グリセリンが広く使われています。
アラビアガムは再度水に溶け出すため、水彩絵具は乾燥後も再使用できます。
透明水彩はアラビアガムを多めに含むことで、分散する顔料の隙間から支持体(紙など)の色が透け、薄い塗りに適します。
不透明水彩は顔料と増粘剤を多めに含むことで、支持体の色を覆い隠し、厚い塗りに適します。
見た目にも透明水彩は光沢を放ち不透明水彩は艶消しになります。
2-1. 透明水彩絵具
透明感のある顔料で、アラビアガムを多く含みます。水で溶いて塗ると下に描いた線や色面を透けて見えます。
形状別に分けて2種類あります。
- チューブタイプの練絵具
- 固形絵具(パンカラーやケーキカラー)
チューブ水彩絵具
顔料(ピグメント)と樹脂溶液(バインダー)を練り合わすとき、樹脂の多い溶液で練りチューブに充填した絵具をチューブ絵具といいます。
この水彩絵具を水で溶いて塗ると、透明な色になり、下に描いた線や色面を透けて見えるようにするので「透明」水彩絵具と言われます。
普通水彩絵具と言うとこの透明水彩絵具をさします。
透明水彩絵具は水で溶いて淡く塗られることが多いのであまり大きなチューブ入りがありません。
5ミリリットルチューブ(2号チューブ)
10ミリリットルチューブ(4号チューブ)
15ミリリットルチューブ(5号チューブ)
代表的なメーカー商材
透明水彩絵具の顔料は世界各地にあるので絵具を製造するために各国から原材料となる素材を輸入して造ります。
水彩絵具は貿易の自由のある国ならばどこの国でも造れるようになり色々な国で製造されるようになりました。
ここでは私の独断と偏見でお勧めするベストメーカーを紹介いたします。
●クサカベ透明水彩絵具
日本画の色名等を取り入れており絵手紙や予備校などの日本画コースなどでもつかわれております。
顔料の良さは日本一だと思います。
●ターナー透明水彩絵具
後発ではありますが日本メーカーの中では一番発色が良いと思います。
粒子感が少ないので、キャラクターイラストなどを描きたい人にも向いています。
●ウィンザー&ニュートン透明水彩絵具
海外メーカーでは一番流通しているメーカーです。
鮮やかな発色と落ち着いた色合いを兼ね備えた透明水彩絵具です。
専門家用のプロフェッショナルカラー(旧アーティストカラー)と廉価用のコットマンというシリーズがありますが、
このメーカーを選ぶならプロフェッショナルカラーにしましょう。
価格の問題でコットマンにするなら、国産メーカーにすることをオススメします。
●シュミンケ ホラダム 透明水彩絵具
とても高級な透明水彩絵具ですがそれに見合う美しさがあります。
鮮やかで色濃いホラダムは一塗りで存在感を感じさせます。
予算に上限なし!という人ならシュミンケ ホラダムの透明水彩絵具をオススメします。
メーカー | 国名 | 色数 | リンク |
クサカベ | 日本 | 全90色 2号5ml 4号10ml(ホワイト2品のみ) 6号20ml(49色) |
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ターナー | 日本 | 全48色 2号5ml |
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ウインザー&ニュートン | イギリス | 全96色 2号5ml |
![]() |
シュミンケホラダム | ドイツ | 全110色 2号5ml |
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2-2.固形水彩絵具
水彩絵具を①半乾きにしたものや②乾かして粉に粉砕してからプレス機で圧縮し固形にした水彩絵具です。
大きく分けて2種類あります。
- パンカラーまたは、キャラメルカラー
- ケーキカラー
①パンカラー(キャラメルカラー)は透明水彩絵具を固形にしたものですが、
②ケーキカラーには透明水彩絵具をプレスして固形にしたものと不透明水彩絵具をプレスして固形にした物があります。
「オペーク水彩絵具」という記載がありますのでご確認下さい。
パンカラーには大きさの違いで次の3種類あります。
ホール パン 表面のサイズ 約30mm×12mm
ハーフ パン 表面のサイズ 約15mm×12mm
クォーター パン 表面のサイズ 約11mm×11mm
サイズはメーカーによって違います。
代表的なメーカー商材
・サクラクレパス
日本の文具メーカーとしておなじみ「サクラクレパス」の水彩絵の具は、国産品として安心して使える商品です。
人気の秘密はコスパの良さにあり、72色というカラーバリエーションながら価格は手ごろで手が出しやすい点が評価されています。
また、以前は単色売りはしてなかったが現在は単色売りも可能になり文具・画材の兼業店でよく見かけます。
●ウィンザー&ニュートン透明水彩絵具
海外メーカーでは一番流通しているメーカーです。
鮮やかな発色と落ち着いた色合いを兼ね備えた透明水彩絵具です。
専門家用のプロフェッショナルカラー(旧アーティストカラー)と廉価用のコットマンというシリーズがありますが、
このメーカーを選ぶならプロフェッショナルカラーにしましょう。
価格の問題でコットマンにするなら、国産メーカーにすることをオススメします。
知識がない状態ではバラで買うのは難しい為、一番初めはセットを買うのをオススメします。
・ペリカン
ドイツの絵具の色合いは日本人の感覚に近いような気がする。
パン(固形になっている絵具の一つ一つをパンと言う)が大きいので色出しがしやすい。
中間色が出しやすい色合い。野外でのやや大きい製作でも便利な逸品です。
735シリーズは不透明固形水彩絵具
●シュミンケ ホラダム 透明水彩絵具
とても高級な透明水彩絵具ですがそれに見合う美しさがあります。
鮮やかで色濃いホラダムは一塗りで存在感を感じさせます。
予算に上限なし!という人ならシュミンケ ホラダムの透明水彩絵具をオススメします。
メーカー | 国名 | 色数 | リンク |
サクラクレパス | 日本 | 全72色 | ![]() |
ウインザー&ニュートン | イギリス | 全96色 | ![]() |
ペリカン725シリーズ 透明絵具 |
ドイツ | 全24色 | ![]() |
ペリカン735シリーズ 不透明絵具 |
ドイツ | 全30色 | ![]() |
シュミンケホラダム | ドイツ | 全110色 | ![]() |
3. 不透明水彩絵具とは?
不透明な顔料でアラビアガムは少なめなものです。
顔料が下の線や色面を覆い隠して見えなくするため不透明水彩と呼ばれる。
水を少なめに使いますので絵は重厚で力強い作品になる傾向があります。顔料が表面に出て発色するため色が鮮明。
3-1. 不透明水彩
顔料と樹脂溶液を練り合わすとき、樹脂の少ない溶液で練り、顔料を多くした水彩絵具です。
この水彩絵具で描くと顔料が下の線や色面を覆い隠して見えなくするので「不透明」水彩絵具と言われます。
また、不透明水彩絵具は「ガッシュ」とも言われ透明水彩絵具で描く大きな作品のメリハリをつけるために
仕上げに併用するなど両者の特徴を活かした使い方もされます。
パステルの発色と似ているのでパステル画の下描きに使用することも多々あります。
余談ですが不透明水彩絵具の顔料をいくぶん安価なもにして体質顔料(無色の顔料)を
適度に加えて練ったものをポスターカラーといいます。
ポスターカラーは体質顔料のため塗りむらが出にくいので色彩教育や美術教材に使用されたり印刷原稿に使用されます。
そのため色彩管理に便利なマンセル測定値を明確に表示してあります。
11ミリ入りチューブ
代表的なメーカー商材
●ニッカー絵具不透明水彩絵具(ニッカーガッシュ)
不透明水彩絵具なので厚く色彩が重ねられ、深く重厚な作品ができます。
すぐに乾き、筆も絵具皿も水で簡単に洗えます。
メーカー | 国名 | 色数 | リンク |
ニッカー絵具 | 日本 | 全57色・11ml | ![]() |
4. 学童用水彩絵具とは?(補足)
日本では小学校などで使う学童用の水彩(マット水彩)を不透明水彩と言うこともありますが、
これは日本独自のもので、本来の不透明水彩と意味合いが違います。
絵画技法がつたない子供たちのために透明水彩と不透明水彩の中間的な性能で、どちらの用法にも対応できるように作られています。
子供用に安価にするために原料が悪く、長期保存には向きません。
代表的なメーカー商材
・ターナー色彩(マット水彩絵具)
使いやすいラミネートチューブ入りの不透明水彩絵具
あざやかな色でなめらかな描き味、混色してもあざやかな発色が特徴です。
メーカー | 国名 | 色数 | リンク |
ターナー色彩 | 日本 | 全18色・11ml | ![]() |
5.代表的なメディウム関係の解説
ここではウィンザー&ニュートンの代表的なテクスチュア メディウム ×11種について解説致します。
商品名 | 容量 | 解説 |
グラニュレーション メディウム | 75ml | 紙にしみつき易い絵具に斑点や粒状の質感を与えるため、作品に深みを出すことができます。 また、すでに粒状感のあるビリジャンやウルトラマリンなどの水彩絵具に 用いると、効果がさらに強調されます。 |
リフティングプリパレーション | 75ml | このメ ディウムを直接紙に塗っておくと、乾いた絵具やしみつき易い絵具でも、濡らした筆やスポンジで簡単にふき取れるようになります。 作品の修正が簡単なため、初心者にも適しています。 |
パーマネントマスキングメディウム | 75ml | このメディウムを紙に塗ると、塗った部分が撥水性に変わります。 乾いた上から水彩絵具を重ね塗りしても定着しません。 水彩絵具と混 ぜて使用することも可能です。 特に細密画などのクッキリさせたい部分には理想的です。 アートマスキング液と違って、このメディウムは除去不可能です。 |
ブレンディング メディウム | 75ml | 乾燥速度を遅らせ、作業時間を増やすために使用します。 特に気温が高くなる季節には、水彩絵具の乾燥をおさえるのに役立ちます。 |
テクスチュア メディウム | 75ml | 細かな粒を含有し質感が出るため、水彩画に深みを与えます。 水で再溶解できますが、通常の水彩絵具と同様に、色によっては紙に残る場合もあります。 |
イリデッセント メディウム | 75ml | パール効果やキラキラした効果を水彩画に与えます。 水彩絵具に混ぜて、または乾燥した画面の上から直接塗って使用します。 |
アクアパスト | 60ml | 透明なジェル状のメディウムです。絵具に混ぜることにより流動性をおさえます。 また、水 彩絵具やガッシュでも厚塗りの効果を出すことができます。 (※アクアパストを混ぜた絵具は、互いに色が混ざり合いませんのでご注意ください。) |
ガムアラビック | 75ml | 水彩絵具の光沢と透明度を増す、淡い色の溶液です。乾燥速度を遅らせる効果もあります。 水で溶いた絵具に混ぜて、またはガムアラビックと水を混ぜて作品全体に用いる こともできます。 (※ガムアラビックは、単独でそのまま使用しないこと。表面に硬い膜ができて剥離してしまいます。) |
アートマスキング液 | 75ml | 薄い黄色のマスキング液。 この溶液を紙に塗ると、塗った部分が耐水性に変わります。 乾いた上から水彩絵具を重ね塗りしても定着しません。 広い面積のマスキング向きです。 彩色した部分が乾いたら消しゴムなどでこすって、できるだけ早く取り去って下さい。 |
カラーレス・アートマスキング液 | 75ml | 無色のマスキング液。 にじみ止めの弱い紙や、しみが残る恐れがある場合に使用します。 彩色した部分が乾いたら消しゴムなどでこすって、できるだけ早く取り去って下さい。 |
オックスゴール リキッド | 75ml | 水彩絵具の伸びと湿潤性を良くするためのメディウムです。このメディウムを数滴落とした水溶液で絵具を溶いて使用します。 にじみ止めの 強い紙でも、これを塗って乾か せば滑らかに彩色できるようになります。 |
例としてわかりやすい動画がありましたので使い方の一例としてご参考にしてくださいね!
参考:バニーコルアート「顔料+ガムアラビック」
6.あると便利な備品関係
ここではあると便利な道具をいくつか解説致します。
6-1.水彩パレット
水彩用パレットは水彩画を楽しむときに欠かせないアイテムですが、パレットの種類により使いやすさが異なるため、
自分に合ったものを選ぶことが大切です。
・リーズナブルな「プラスチック」
プラスチックパレットはもろいですが、きわめて安価で軽いです。ホーロー加工されたスチールやアルミと違い、
絵具をはじいて色にそまりやすいです。
代表的なメーカー:坪米(ミッキーパレット)

・通常お勧めは「アルミパレット」
アルミ(アルミニウム)のパレットはスチールパレットに比べて軽く、価格もリーズナブルです。
やや変形しやすいのが欠点です。
代表的メーカー:APパレット

・やはり最後は「スチールパレット」
スチールパレットはとても丈夫で重いです。
高価ですが長く使えます。
代表的メーカー:アトリエパレット(川辺パレット)

ホーローとは、金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を高温で焼きつけたものです。
サビや劣化をふせいで絵具の色にそまらず、絵具のなじみがよいといわれます。
6-2.バケツ(筆洗器)
透明水彩では水をたっぷり使います。
他の容器でも代用できますが、やはり筆洗は専用につくられているので使いがってがいいです。
2つ以上水入れ部分があると、筆の洗いとすすぎを別にできます。
透明水彩の持ち味は透明感です。
汚れた筆で混ぜて絵具を濁らせないように、つねに筆をすすいできれいにしておきます。
さらに3つ以上に分かれていると、水彩紙を濡らす水も別にできます。
代表的メーカー:坪米(ミッキーバケツ)

6-3.海綿
筆を拭ったり、筆に絵具を含ませた時の水分を調節するのに使います。
また、筆では描けない様々な表現効果を生み出す描画材として用いる天然スポンジです。
乾燥させることで、柔らかく弾力がある多孔質な繊維状の骨格のみになり、大変吸水性のある特性を持ちます。
大きさや形態は、自然物なので定まっていませんが、市販品はある程度のサイズで分類して販売されています。
また、表面の肌理(キメ)の具合により、細目(シルク)と荒目(ウール)などの種類があります。
ちなみに、代用として安価な石油合成によるスポンジなどもありますが、柔らかな使用感や肌理細かさ、
吸水性などは大きく異なります。
代表的メーカー:クサカベ

7. まとめ
いかがだったでしょうか?
ここでは独断と偏見で絵具を例にだしましたが
日本にはまだまだいっぱい素晴らしい水彩絵具があります。
個人的な意見ですが透明水彩は出来るだけ混色をせずお使い頂けると素晴らしい発色と
美しい透明感ある作品が出来ると思います。
また、「洋画筆編・水彩筆」にのっている筆をさらに絞った表を作成しましたのでご参考にしてみてください。
7-1.おすすめ筆
7-2.おすすめ動画
最後にバニーコルアートさんのホームページで透明水彩の素晴らしさを伝える動画ありました。
ご参考にしてみてください。
参考:W&N Professional WATER COLOUR × ARCHES
(小野月世デモンストレーション)
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